アベノミクス「稼ぐ力」とは何なのか?
ただ、消費税も上がるなど、最近の国の政策は個人に厳しい感は否めない。そして国も企業も、もはや「稼ぎ方」がわからず、そのしわ寄せを「あなたたちで考えてください」と、末端の働く人々に押し付けている感じがしなくもない。今回の素案では、企業にとって人件費を抑えられる「残業代ゼロ制度」だけでなく、「法人税率の引き下げ」まであり、企業のメリットの大きさが際立つ。会社員は給与が減り、労働時間が増えるリスクを背負うのとは対照的だ。これに対し、政府は「企業が収益をあげれば、雇用が拡大し、賃金も上がり、最終的に国民に還元される」というスタンスだ。 素案では、具体的な「稼ぎ方」もいくつか示している。その一つが「ロボット」。高齢化や人手不足などを解決するために、日本のロボット産業が期待されている。2020年までに国内のロボット市場を現在の2倍に、サービスなどの分野で20倍に拡大することを目指す。こうした先端技術の分野は、日本人が稼ぐには有望だということだろう。 とはいえ、技術志向には落とし穴も潜む。4月に開かれた経済産業省「日本の『稼ぐ力』創出研究会」(第1回)では、「経営者だけでなく従業員も含め、技術で世界一になりたいという意識はあっても、『稼ぐ』ことへの意識が足りない」と厳しく指摘された。日本人はまじめで、目の前の仕事を突き詰めることには一所懸命に取り組む。が、最高の技術を持った日本の家電メーカーが、アップルなど顧客志向を貫いた企業に大きく遅れをとったのは記憶に新しい。今後は、その仕事が本当にお客様の役に立っているのか?一人ひとりの働き手が自分に厳しく問うていくことが求められそうだ。 (文責・坂本宗之祐)