運用5年で加盟店、登録者とも右肩上がりのスマホ決済アプリ「Payどん」 地域振興券との連携で”がっちり!!” 他行庫連携で広がる間口、デジタル弱者への普及が課題 鹿児島銀行
鹿児島銀行(鹿児島市)のスマートフォン決済アプリ「Payどん」の運用開始から5年が過ぎた。PayPay(ペイペイ)など全国展開するキャッシュレス決済サービスと一線を画し地域振興券事業に注力、他の地元金融機関と連携し加盟店・登録者数ともに伸び存在感を示す。一方で、スマートフォンに不慣れな高齢者らにはハードルが高く、デジタル弱者への浸透が課題となっている。 【写真】スマートフォン決済アプリ「Payどん」を使っての食事代支払い=鹿児島市与次郎1丁目の満正苑与次郎本店
Payどんは、鹿銀が県内のキャッシュレス普及や経済の地域内循環を目的に自社開発し、2019年6月にサービスを始めた。20年の鹿児島市天文館地区と鴨池地区を皮切りに、自治体や商店街などが相次ぎプレミアム商品券に採用したことで知名度が上がり、24年6月末時点で加盟店は約2万3000店舗、登録者は約14万2000人に上る。 同行地域DX推進グループの上岡竜副調査役(38)は「地域振興券事業を始めてから、加盟店、登録者とも右肩上がり」と話す。23年度、指宿市で採用されると、エリア内加盟店は1.6倍、登録者数は1.3倍となった。今月24日からはQRコードで地域振興券が取得できる機能を追加するなど、利便性の向上にも余念がない。 キャッシュレス決済特有の利点は企業にも広がる。鹿児島市の商業施設オプシアミスミは7月、紙発行のプレミアム商品券をPayどんへ切り替えたことで、偽造防止のための印刷費に加え、販売や清算事務作業の人手を抑えられた。
いつでもどこでもスマホで購入でき、1円単位で使えるなど客側の利便性も高まり、日高和人支配人(61)は「高齢者に受け入れられるか心配だったが、便利になったとの声が多い」と手応えを感じている。 当初、Payどんのアプリとひも付けられる口座は鹿銀のみだったが、23年10月からは南日本銀行と鹿児島相互信用金庫、今年3月には鹿児島信用金庫も登録可能になり、間口が広がった。同様の連携は全国でも珍しいという。中華料理店の満正苑(同市)は客からの要望に加え、登録金融機関の拡大で利用者増が見込めるとして、5月にPayどんを追加導入した。 南日本銀行営業統括部の吉永健一上席調査役(47)は「それぞれがアプリを持ち競争するより、一つで完結する方が客にとって便利。地域振興券をきっかけに店へ足を運ぶ人は多く、事業者の新規客獲得につながっている」と説明する。 加盟店や利用客が増える中、課題も見えてきた。満正苑の大久保清美さん(47)は「年配客から登録方法や使い方を質問される」、オプシアミスミの日高支配人も「使い方が分からないという指摘はある」と話す。
鹿銀の上岡副調査役は「要望があれば登録方法や使い方の説明会を開く。各地に支店を持つ強みを生かし普及につなげたい」と力を込めた。
南日本新聞 | 鹿児島