【2023エンタメベスト】岡田将生、高橋海人、森本慎太郎、めるる...俳優たちの名演技に震える５作！
映画ライターの須永貴子さんが、2023年に公開された海外映画・日本映画・地上波ドラマ・配信オリジナル作品から、それぞれのベストを選出。エンタメ愛と、演者へのリスペクトたっぷりの文章とともにご紹介します! 監督の愛犬たちの“見事すぎる名演”も必見!フィンランドの名匠が贈る公開中の映画『枯れ葉』予告（ほか、動画5本）
海外映画『枯れ葉』
海外映画のベストムービーは、フィンランドの名匠・アキ・カウリスマキが引退宣言を撤回して6年ぶりに監督した『枯れ葉』です。ヘルシンキを舞台に、理不尽な理由で突然仕事を失ったアンサと、アルコールが原因で仕事が長続きしないホラッパという、もう若くはない2人の恋が描かれます。 カウリスマキは一貫して、労働者、高齢者、失業者、貧困者、難民や移民といった社会の弱者に目を向けてきましたが、『マッチ工場の少女』など初期の作品に比べると彼らへの視点が年々優しくなってきていて、本作も、愛する人のためなら人は変わることができるという楽観的な着地を迎えます。アンサの部屋のラジオから聞こえるウクライナ情勢のように、この世界には悲しく酷い出来事がたくさんありますが、人間には良心や善意、なにより愛があることを、この映画は伝えてくれるのです。 ちなみに、カウリスマキ映画に欠かせない希望のシンボルのような存在が、監督の愛犬たち。本作でも、アンサが保護して一緒に暮らし始める野良犬を、野良犬出身の可愛いわんこが慎ましやかに好演しています。歴代の俳優犬たちの穏やかでエレガントな振る舞いや表情から伝わるのは、彼らがカウリスマキから愛されて、信頼関係を築いていること。だから観客は、カウリスマキが描く「愛」を信じられるのです。
日本映画『1秒先の彼』
『1秒先の彼』は日本映画では珍しく、映画だから起こせるミラクルを味わい尽くすことができる1本です。それはこの作品が、台湾映画『1秒先の彼女』のリメイクだからと言ってしまえばそうなのかもしれませんが、原作にリスペクトを捧げつつ、日本でリメイクした意義のある、チャーミングなラブストーリーに仕上がっています。 まず、オリジナルと男女の性別を入れ替えて、岡田将生をドタバタと奔走するヒロイン的ポジションに据えたことが大正解です。彼が演じるハジメは、何をするにもとにかく1秒早く、せっかちで口が悪く、「見た目は100点なのに中身が残念」と言われる郵便局員。気になる女の子との花火大会デートの日の記憶がすっぽり抜け落ちて困惑し、何があったのかを探って口を尖らせながら右往左往する姿は（身近にいたらムカつくけれど）、ミステリー仕立てのラブコメのヒロインとして申し分ありません。 ある意味日本でもっともミステリアスな場所といえる京都を舞台にしたことも、“消えた1日”のギミックに説得力をもたせる上で、大正解といえるでしょう。
