【2023エンタメベスト】岡田将生、高橋海人、森本慎太郎、めるる...俳優たちの名演技に震える5作!
『だが、情熱はある』(Hulu)
2023年は、連続ドラマだけで100本以上(!)が放送されただけあり、『ブラッシュアップライフ』や『ハヤブサ消防団』、『わたしの一番最悪なともだち』などたくさんの名作が誕生しました。どうしても1本に絞りきれず、2本セレクトしました。まずは、オードリー・若林正恭と南海キャンディーズ・山里亮太がそれぞれに執筆したエッセイをもとに、2人の半生を描く青春ドラマ『だが、情熱はある』。 若林に高橋海人、山里に森本慎太郎という配役が発表されたときの率直な感想は、「全然似てないな」でした。そしてドラマを見始めると、生来の姿かたちも声質も似ていないのに、2人の若手俳優がオードリーの若林と南海キャンディーズの山里を体現していることに衝撃を受けました。 高橋と森本の役柄へのアプローチは、表情筋の動かし方、発声、仕草、間の取り方といった、技術で真似できる部分すべてを習得した上で、若林と山里の世の中に対する怒りや憎しみ、自分の才能への懐疑、芸人としての不安や焦り、他者への嫉妬、葛藤などを理解し、場面場面で役の感情にシンクロして放出するというものでした。 コスプレ芝居とはまったく違う、身を削るような演技に何度も鳥肌が立ちましたし、外見が似ていなくても他の人物になれる俳優という仕事の凄みに震えました。これは、『Q10』『泣くな、はらちゃん』『奇跡の人』といった名作ドラマを生み出してきた河野英弘プロデューサーのフィルモグラフィーに打ち立てられた、新たな金字塔といえるでしょう。
『日曜の夜ぐらいは…』
2023年4月、関西の放送局・朝日放送テレビ(ABC)が全国ネット(テレビ朝日系)の連続ドラマ枠を新設しました。第1弾は、日曜夜10時という枠におそらくタイトルを寄せたと思われる『日曜の夜ぐらいは』。 ヤングケアラーの岸田サチ(清野菜名)、タクシードライバーの野田翔子(岸井ゆきの)、祖母とちくわぶ工場に勤務する樋口若葉(生見愛瑠)の3人がラジオ番組主催のバスツアーで出会い、かけがえのない友情を築き上げる青春ヒューマンドラマです。それぞれの事情で、友人も恋人も未来への期待も持ち得なかった3人にとって、この友情関係が人生で初めての、絶対に手放したくないものとなっていきます。 ストーリーを盛り上げるための必要悪として、悪人や不運といった障害が特に前半は彼女たちにつきまといます。筆者は「彼女たちに幸せになってほしい、3人でずっと笑顔でいてほしい」という気持ちが強くなりすぎて、3人でカフェを作るという目標が定まった第4話で「ここで最終回にしよう! 彼女たちにこれ以上つらい思いをさせたくない!」というめちゃくちゃな感情になってしまいました……。 お世辞抜きで俳優陣全員が良かったのですが、特にめるること生見愛瑠の演技は事件といえる素晴らしさ! 笑顔の陰影の微調整が自由自在かつ、時折オタク的なムーブでまくしたてる早口の台詞回しも完璧です。器用ではあるのですが小手先でこなしているのではなく、’生見愛瑠’を完全に封印し、共演者たちの名演技に役として純粋に反応しているとお見受けしました。共演者の演技のレベルが上がれば上がるほど高いポテンシャルを発揮するめるるから、2024年も目を離せません。