孤独が磨く最高の「切れ味」83歳いまなお進化──山奥の町、最後の鍛冶職人
片桐さんが一仕事終えた後、汗だくの頭とコークスなどで汚れた腕をガレージの流しで豪快に洗い、天竜川の方を見て「いい風だな」とつぶやく。片桐さんの妻は生前「お父さん、生まれ変わったらきれいな仕事にしないか。鍛冶屋は石けん代だけでも損だ」と言って笑ったという。「女房はそう言って死んだが、鍛冶やってるからこうやって一人でも生き残ってやれた。今が充実している」と頬をゆるめる。「さあ人生の最後を飾らにゃいかんね」――片桐さんは今日も完璧な技を求めて鉄を打つ。 ※1 平成25年度森林林業白書 ※2 「佐久間町の『山・川に生きる書道具」等保存活用(2001年発行、佐久間町教育委員会) (この記事はジャーナリストキャンプ2015浜松の作品です。執筆:宮本真希、デスク:田中輝美) ■宮本真希(みやもと・まき) 1984年生まれ。ITmediaの編集記者として2007年4月よりIT業界やネットカルチャーを取材。2014年10月よりYahoo!ニュース編集部。