マネスキンのヴィクトリアが語るDJに目覚めた理由、セクシーとハイエナジー、多様性の追求
サマーソニックでのヘッドライナー公演が目前に迫る中、マネスキンのグルーヴ・マシーン、ヴィクトリア・デ・アンジェリスがインタヴューに応じてくれた。その理由? 言うまでもなく、彼女の課外プロジェクトだ。ロックンロールだけでなくダンス・ミュージックも愛し、DJ活動をスタートさせた彼女は、幕張メッセで8月16日開催されるソニックマニアにも出演を予定していることはご存知の通り。トラック作りにも取り組み、DJ/プロデューサーとしての名刺代わりに制作したというミックステープ『Victoria’s Treat』(タイトルもジャケットも某ランジェリー・ブランドに因む)を半年前にリリースして、ここ数カ月の間に場数を踏んできたヴィクトリアに、まだあまり語ったことがないクラブ・カルチャーとの関係を振り返ってもらおう。 【画像を見る】DJ中のヴィクトリア * ―今のように、DJとしての活動を軌道に乗せるという展開は、あなたにとって想定外だったのでしょうか。それとも、いつか独自の作品を作るんだろうなという予感はあったんですか? ヴィクトリア:これまではバンドの枠外で何かをやるなんて、あまり考えたことはなかったかな。何しろマネスキンの一員としてノンストップで走ってきたから、ソロ活動は物理的に無理な話でしょ。でも以前からダンス・ミュージックは大好きだったし、空き時間にちょこちょこ曲を作ったり、マネスキンのライブのアフターパーティーでDJをしたりしていて、常に私の生活の一部ではあった。やっていて楽しかったし、そういう意味では、こういう展開は必然的だったんだと思う。時間さえあれば、遅かれ早かれやることになったんじゃないかな。で、まさにここにきて数カ月間オフを取ることが出来て、バンドのツアーの予定もしばらくなかったから、今のうちにやっちゃおうと。結果的にはすごく充実した体験になったし、普段と違うことをやるのはものすごく刺激的でもある。マネスキンでの活動とはあまりにもかけ離れていて、全く異なる世界に身を置いているわけだから。 ―あなたとクラブ・カルチャーとの出会いを教えて下さい。若い頃からダンス・ミュージックも聞いていたんですか? ヴィクトリア:えっと、高校時代に友達と色んなパーティーに行っていたのが始まりで、15歳くらいだったかな。ただその頃は、クラビングという体験やクラブという環境そのものが私にとっては重要で、DJがどうとか、かかっている音楽がどうとか、そういう面にはあまり関心がなかった。ほら、クラブってすごく自由な空間で、思い切り楽しむことができて、色んな人と出会えるでしょ。今に至るまで、そこにクラブ・コミュニティの素晴らしさがあるわけだけど、その後だんだんクラブでかかっている音楽への興味も増して、「あ、この曲すごくカッコいい!」と思ってその場でShazamして調べたりするようになった。そしてDJの友達ができて、そうするとDJにも興味が湧いたんだよね。DJたちを観察して、みんなそれぞれ違うスタイルでプレイしていることが分かってきて、彼らに色々教わりながら、あくまで遊びとして自分もDJを始めたわけ。当初はごくプライベートな友達のパーティーなんかでプレイしていたんだけど、これが本当に楽しくて! みんながひとつになって、その空間に生まれるエネルギーに興奮させられた。すぐ目の前に人々がいて、一緒に踊って、自分がそのエネルギーを自在に操っているように感じられて、ダイレクトに反応を引き出せる感覚がすごくクールだと思うし。 ―当時のローマのクラブ・シーンはどんな感じでした? ヴィクトリア:例えばベルリンとかロンドンとかニューヨークには遥かに大規模なクラブ・シーンがあるわけだけど、ローマでも規模は小さいとはいえ、すごくクールな、インディペンデントなパーティーがたくさんオーガナイズされてた。私にクラブ・シーンの面白さを教えてくれたのもそういったパーティーだったし、その後もう少し大人になってから外国の都市のシーンも体験したことで、クラブ・カルチャーが秘めるポテンシャルの大きさを思い知らされた気がする。 ―じゃあ、「これを真剣にやりたい」と考え始めたのはいつ頃でしたか? ヴィクトリア:本気でやろうと力を注ぐようになったのは、1年前くらいかな。DJとしても短期間にかなりのスピードで成長できた気がするし、自分は本当にラッキーだなって思う。 ―初めてDJをやった時のことは覚えていますか? ヴィクトリア:うん。数年前の大晦日で、友達が集まる内輪のパーティーだったから、本当に遊びのつもりだったんだけど、多分ひどい出来だったんだと思う(笑)。プロとしてのDJデビューは春にやったDJツアーで、3月16日に英国のリーズのウェアハウスというクラブで、Partiboi69(オーストラリア人のDJ/プロデューサー)のオープニング・アクトとして出演したのが初舞台。めちゃくちゃ緊張してたけど、彼はすごく優しくて、私をリラックスさせてくれて、「君がやりたいようにやって楽しめばいいんだよ」と言ってくれたっけ。結果的には最高の夜になった。 ―その初のDJツアーでは、3月から5月にかけて、ヨーロッパとアメリカの20都市を周りました。 ヴィクトリア:本当にクールだった! 来てくれる人たちがみんなが歓迎モードのエネルギーで包んでくれて、毎晩たくさんの出会いがあって、インタラクションがあって、全然違う体験になった。場所によっても状況が一変するし、例えば出演するのがハウス系のイベントなのか、テクノ系のイベントなのかで同じ曲に対する反応が全く違うから、何が起きるか分からない。だからこそ、その場でアドリブで変化を加えて、新しい曲を探して、ノンストップで適応する必要がある。そういう意味でものすごく刺激的だった。常に進化し、成長し続けているっていう実感があったな。同じイベントでプレイした人たちはみんな、全然違う世界からやってきた私に本当に優しくて、アドバイスをくれたり励ましてくれた。感謝の気持ちでいっぱいだし、おかげで私も自分らしさを追求できてる。重要なのはそこなんだと思うな。