中村米吉の#カワイイは世界を救う?第24回 動物たちに癒やされながら役作りに励む
2024年もついに年末。我らが中村米吉は、女方の大役である“三姫”より八重垣姫と時姫、「ヤマトタケル」より兄橘姫と弟橘姫、「夏祭浪花鑑」よりお梶など、今年も多くの役を演じてきた。そんな米吉の2024年を締めくくる役は、「十二月大歌舞伎」昼の部「あらしのよるに」よりヤギのお姫様・みい姫! 2018年の博多公演ぶりに同役を勤める米吉だが、今回も思わず“食べたく”なってしまう可愛さで観客をメロメロにしている。ヤギらしい可愛さがにじむ、かれんな舞にも注目しよう。 【画像】中村米吉(他21件) このコラムは、年中カワイイ米吉に、カワイイものを紹介してもらい、カワイイ×カワイイの相乗効果で、世界を救うことを目指している。今回米吉は、“役作り”のためにとある場所へ向かった。カワイイだらけのその施設で、果たして米吉は役の極意をつかむことができるのだろうか。 題字:中村米吉 協力:アニタッチ 東京ドームシティ(東京都文京区後楽1-3-61 黄色いビル1階) ■ 己の演じる役を突き詰めんと、過酷とも言える“役作り”に挑む… “役作り” 太ったり、痩せたり、すごいときには歯を抜いたり。 役と自分を重ねていき、同じ感情、境遇に我が身を置く。 その役に近づくために努力を惜しまない役者の凄まじさを見る瞬間です。 私たち歌舞伎役者は1カ月スパンで演じる物が変わるし、同じ月の中で2つも3つも役を演じるので、そこまでのことはなかなかしづらいかもしれません。 それに、役の気持ちになるために我が子を身代わりにしたり、女に化けて盗みをしたりするわけにもいかないでしょう?(祇園町でうつけのフリして遊ぶくらいはできるかもしれないけどさ笑) しかし、私は己の演じる役を突き詰めんと、過酷とも言える“役作り”に挑みました。 その舞台となったのが…… “アニタッチ 東京ドームシティ”! 今月私が勤めているのは「あらしのよるに」に登場するヤギのお姫様。 そこで私は本行を学ぶためこの地に赴いたのであります! “アニタッチ”とは動物に癒されたり、子供の優しい心を育てたり、お家じゃ飼えないけど触れ合いたいなど、多くの動物好きのお客様の願いを叶える屋内型ふれあい動物園! さぁ、触れ合って触れ合って、癒されながらヤギの芸を盗むぞ!! と、意気込んで中へ入るとヒヨコさんたちがたくさんお出迎え。 黄色くて、小さくて、ふわふわで、あったかくて、離れがたい。 側にいたお子さんも帰りたくないとごねていました。 ヒヨコさんたちに温めてもらい、動物たちが放し飼いになっている“カピバラとワオキツネザルの部屋”へ。 入った途端驚くのなんの、さまざまな種類の動物たちが放し飼いに! 部屋の名前のカピバラ、ワオキツネザルだけでなく、下を何かが通ったと思えばアルマジロだったり(足がすごく速いの)。 上を見上げればナマケモノさんがライトに当たっていたり(あったかいらしい)。 ちょっと振り返ればコモンマーモセットに見守られているという環境。 圧巻とも言えるこの空間に心躍ります! タワシみたいなカピバラさんを撫でいたその後ろに忍び寄る影……。 そう! 今回の来訪の目的、パンダヤギ師匠! 青い首輪が男の子の“ロミくん”、ピンクの首輪が女の子の“ジュリちゃん”。 “ロミオとジュリエット”が由来のお名前。 かのシェイクスピアの大傑作から命名されるとは! 師と仰ぐに不足はないですな……。 お二人ともすごく食欲旺盛!! ヤギ歴の浅い私は翻弄されています(笑)。 お食事後、少し距離が縮まりゆっくりお話ができましたよ。 師曰く、「ヤギは葉っぱを咀嚼して反芻するのだよ。そして高い所が好きだ。あと、コミュニケーションを取るときには頭突きをするんだ。舞台に活かしなさい」。 などと、貴重なお話をうかがっていたら、突然ワオキツネザルのリコちゃんが私の肩に! イタズラ好きのリコちゃんは隙を見せてる人を見ると驚かせたくなるんだとか。 あれ、なんか知ってるこの感じ……。 「怖くない、怖くない……」 ってやらせないでよ!!(笑) 外にはカフェが併設されていて、そこでコーヒーの上の生クリームに動物の絵が描かれた“カピオレ”と“カピバラ焼き”を購入。 “カピオレ”なのに絵はワオキツネザルでした(笑)。 動物たちとの交流で温まった心だけでなく、焼きたての“カピバラ焼き”と“カピオレ”が体も温めてくれて、冬に最適ですね。 ご紹介していませんが、ヒツジやフェレット、モルモットにウサギ、フクロウなどの鳥たちやイグアナをはじめとする爬虫類などなど、貴重な動物とたくさん触れ合える素敵な所でした。 動物たちの可愛さは言うに及ばず、アテンドしてくれた飼育員の“東島さん”の、ここにいる子たちのことを、家族や友達、更には我が子や恋人でもあるかのように楽しそうに話してくださったその姿も“カワイイ”ものでありました。 是非皆さんもこの可愛さに救われに行ってみてください! え? “役作り”はどうしたって? とりあえず、ヤギの“めい”役の菊之助兄さんに頭突きでもしてみましょうかねぇ……。 ■ 中村米吉 1993年、東京都生まれ。播磨屋。中村歌六の長男。2000年に中村米吉の名を襲名して初舞台。2011年から女方を志し、「鬼一法眼三略巻 菊畑」で皆鶴姫、「与話情浮名横櫛」でお富、「松浦の太鼓」でお縫、「仮名手本忠臣蔵 七段目」で遊女お軽、「絵本太功記」で初菊などを勤める。またアメリカ・ラスベガスで行われた歌舞伎興行では、2015年に「鯉つかみ」小桜姫役、2016年に新作歌舞伎「獅子王」白縫姫役で出演。2015年には「鳴神」の雲の絶間姫役の演技で十三夜会奨励賞、2021年には第42回松尾芸能賞で新人賞を受賞した。2022年7月に上演された「風の谷のナウシカ 上の巻 ―白き魔女の戦記―」、2022年12月から昨年1月にかけて上演された「オンディーヌ」では、それぞれタイトルロールを務め、2023年3・4月に上演された「新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX」、2024年2・3月、10月に行われたスーパー歌舞伎「三代猿之助四十八撰の内『ヤマトタケル』」の東京公演と福岡公演では、それぞれヒロイン役を勤めた。また女方の大役・三姫より、「祇園祭礼信仰記」雪姫を2023年9月、「本朝廿四孝」八重垣姫を2024年1月、「鎌倉三代記」時姫を2024年11月に、それぞれ初役で演じた。