【毎日書評】仕事がスムーズに進み、職場環境がよくなる「対人心理学」
職場の生産性を上げる方法
イギリスにあるウォーリック大学のアンドリュー・オズワルドは、「幸せな気分のときに、本当に生産性が高まるのか」を確認するための実験を、何度もくり返しました。 参加者はのべ700人を超えます。楽しい気分にさせるために、オズワルドは第1実験と第2実験では、「コメディアンのビデオ」を使いました。コメディアンのビデオを10分間見せてから、2桁の数字を5つ足し算する(31+51+14+44+87=?)という単純な計算をやらせてみたのです。 この実験では、できるだけ早く、できるだけたくさん解くことが求められました。正解すると1問につき、0.25ユーロが支払われることになっていたので、参加者は真剣に取り組んでくれました。これで生産性を選定してみたわけです。(126~127ページより) その結果、コメディアンのビデオを見て笑ったあとは、たしかに生産性が上がっていたそう。つまり、「楽しい気分を与えれば、生産性が上がる」ということが立証されたわけです。 また第3実験として、果物やチョコレートを提供して幸せな気分にさせたときはどうなるかについても実験したところ、やはり生産性は上がったといいます。 どんな形であれ、「楽しいなあ」「幸せだなあ」という気持ちにさせることができれば、生産性は12%ほど高くなる、ということをオズワルドは突き止めました。(127ページより) もちろんこれは、職場の生産性を高めることにもあてはまるはず。どうせ仕事をするのなら、みんなで和気あいあいと楽しい気分でいたいところ。つまり、そういう雰囲気づくりをしてくれる上司や社長の下でなら、従業員は一生懸命仕事に取り組んでくれるということです。(126ページより)
社員の一体感を高める簡単な方法
著者はこの項で、職場でラジオ体操をすることを勧めています。一緒に動きを合わせれば社員の一体感が高まり、絆が強化されるというのがその理由。 毎朝ほんの10分程度の時間を使うだけで「社内の和」が生まれる、すなわち「一緒になにかをすると、私たちはとても仲よくなれる」ということのようです。難しいことではありませんし、たしかに始めてみる価値はあるかもしれません。 米国スタンフォード大学のスコット・ウィルターマスは、3人組のグループをいくつか作らせ、キャンパスの周囲を歩いてもらう、という和やかな実験をしたことがあります。ただし、あるグループには「手の振りや、歩調などを合わせて歩いてきて」とお願いして、残りのグループには「3人で普通に歩いてきて」と伝えました。(129ページ) 散歩が終わったとことで各グループに、協力して行うゲームをしてもらった結果、特徴的な結果が出たそうです。歩調を合わせて歩いたグループのほうが、協力が増えることがわかったというのです。歩調を合わせて歩いていると、シンクロニー(多くの時間をともにすることで言動が似てくる現象)が高まり、互いに協力し合えるようになったわけです。 つまり私たちは、同じ動作をしていれば一体感が高まるということ。著者が職場でのラジオ体操を勧めるのも、そんな理由があるからなのです。(129ページより) 学術的であるというより、誰かに話したくなってしまうようなトピックスがぎっしり詰まった一冊。そのため実用的であるだけでなく、読み物としても魅力的です。 >>Kindle unlimited、2万冊以上が楽しめる読み放題を体験! 「毎日書評」をもっと読む>> 「毎日書評」をVoicyで聞く>> Source: 総合法令出版
印南敦史