《ブラジル》自動車部品で世界を「つなぐ」矢崎ブラジル社 現地で活躍する日系企業の今(33)
現地で活躍する日系企業の今を伝える本連載の第33回目は、ヤザキ・ド・ブラジル社(ラザロ・デ・フィゲイレッド・ジュニオール社長)の井伊直樹会長(64、東京出身)とレオナルド・エイジ・ファリア部長(39、リオデジャネイロ出身)に話を聞いた。同社はクルマの機器をつなぐワイヤーハーネス(自動車用組電線)を中心とする自動車部品をブラジル各地で製造・販売している。南米でも人々の暮らしや社会全体を通じて矢崎グループの製品に共通するコンセプト「つなぐ」を実現する。
自動車メーカーの進出とともに
矢崎ブラジル社がブラジルに設立されたのは1997年、当初は工場のあるサンパウロ州タトゥイに本社が設置された。同時期に日本の自動車メーカーがブラジルで現地生産を活発化させたのに合わせて進出し、今日までブラジル国内に事務所は4カ所(サンパウロ市、クリチーバ市、ベロオリゾンテ市、サルバドール市)、工場は5州(サンパウロ州、パラナ州、ミナスジェライス州、ペルナンブッコ州、セルジッペ州)6カ所に設置されている。 製造品目は9割以上がワイヤーハーネスで、他は自動車用メーターである。製造に必要な部品は日本やアセアン、メキシコ、EUから輸入されているが、ブラジルで製造された製品はほぼ全て国内で流通し、顧客比率は日系と非日系自動車メーカーが同等である。 世界の多国籍企業と競合する中で、同社の製品は日本で追求されてきた電力と情報を確実かつ正確に、必要なところへ伝える技術によって「クルマの中」「クルマと人」「クルマと社会」をつなぎ、安心、安全、良品廉価との評価を得てきた。
メルコスルでも「世界とともにある企業」
矢崎グループが海外に初拠点を置いたのは1962年のタイで、今日では世界46カ国で事業展開し、従業員数は24万1484名(日本:1万7873名、海外:22万3611名、内ブラジル約8000人)(2023年6月時点)に上る。2023年6月度決算の世界の地域別連結売上(合計2兆2697億円)比率は、日本31・4%、北、中、南米32・0%、アジア18・3%、欧州、アフリカ18・3%と、最近は円安の影響も受けて海外売上が相対的に大きくなっている。 矢崎グループの南米最初の進出国は1995年のコロンビアとアルゼンチン、その2年後にブラジル、2005年にウルグアイ、2013年にパラグアイと続いた。 ブラジル進出後の27年間で複数の州に生産、販売拠点が設置されてきたのは、州ごとに法律や税制が異なるブラジルのビジネスでの複雑な手続きを効率化し、各地に拠点を設けている自動車メーカーとの連携をスムーズにするためである。 現在はブラジル国内を含めて南米5カ国の11カ所に工場があり、特にパラグアイの工場はマラキドーラ制度(注1)を利用して、ブラジルほかメルコスル向けの生産加工拠点として、近年のパラグアイ経済の成長にも貢献している。 ワイヤーハーネスの生産は細かな手作業が必要で、機械による自動化が難しく、しかも車両毎に仕様が異なる製品である。工場で働くワーカーの約7割は手先の器用な女性たちで、日本と同品質のものをブラジルでも生産している。ワーキングマザーも多いことから、同社では両親の働く工場の見学会も定期的に実施している。 また、矢崎グループは全世界から毎年現地の従業員の子どもたちを日本に集結させてサマーキャンプを開催しており、今年も7月にメルコスルから8人の子どもが日本を訪れ、多国籍の子どもたちと一緒に日本文化に触れながら国際交流を行った。
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