「アメリカのご機嫌さえとっておけば、有事の際に助けてくれる」と思ったら大間違い…トランプ大統領のブレーンが危惧する「中国の日本侵攻リスク」
「台湾と日本にとってまずいのは、彼らが、『アメリカのご機嫌さえとっておけば(つまりそれなりに防衛義務さえ果たしておけば)、いざという時にアメリカが助けてくれる』と考える傾向があることです」 【著者の写真】「日本の現在」に警鐘を鳴らすトランプ大統領のブレーン かつてトランプ政権で「外交・安全保障」分野のブレーンとして活躍した、元国防次官補代理のエルブリッジ・コルビー氏はそう語る。新トランプ政権でも要職への任命が予想される同氏が語った「戦争のリアル」とは? 新刊『 アジア・ファースト 新・アメリカの軍事戦略 』(文藝春秋)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/ 後編 を読む) ◆◆◆
中国に戦争をあきらめさせる
台湾人にとって、そして日本人にとっても非常に重要なのは、正規軍や予備役、彼らの市民社会が自国を防衛できるようにすることです。ここで理想的なのは、私たちが侵略をともに拒否できることを、中国に知らしめ、侵略を始めるのは止めておこうと決断させることです。もっとも『拒否戦略』(日経BP)の中で私はこの閾値が実際には固定的なものではなく、むしろ動的なものであることを詳しく説明しています。 たとえば1941年12月6日のアメリカ人たちは、日本との太平洋戦争には反対していました。ところがその翌日からアメリカ人たちは日本が戦争を始めたと知って、自分たちの利害関係についての認識を劇的に変えたのです。つまり、物事の判断が理性的になり、アメリカは開戦当初には決して考えもしなかった苛烈な国民負担を支持できるようになりました。 この文脈とは別に、台湾や日本、そしてフィリピンやその他の国々が開始しているのは、中国の脅威に対抗するための防衛関係のネットワークの構築です。これはゆっくりですが確実な動きです。 ここで大事なのは、「アメリカは大規模な戦争への準備をしている」と中国側に思わせることなのです。これは少々複雑なアイデアだと感じるかもしれませんし、「コルビーは大規模な戦争を引き起こそうとしているんだ!」と勘違いする人たちもいるかもしれません。 私が目指しているのはその逆です。私は中国の「選択的なサラミ・スライス戦略」によって反覇権連合を崩されるのを防ぎたいだけなのです。むしろそのようなことをすれば戦争になる可能性が高くなるぞ、それは結局のところ中国にとって大きなマイナスになるぞ、と思わせたいのです。 中国が「太平洋における限定的な目的を達成するために第三次世界大戦かそれに近い侵攻を始めよう」と出来心を抱いても、それは無理な話なのであきらめさせるのがよいというわけです。