政治に逆流する排外主義 橋下市長・在特会会長の会談から見えたもの 徳島大学准教授・樋口直人
橋下発言の意味――政治へと逆流する排外主義
冒頭で紹介した橋下氏の発言「特別永住を廃止すべき」は、「影」たる在特会の主張が「本体」に逆流したことを示す。在特会は、特別永住資格、朝鮮学校補助金交付、生活保護優遇、通名制度を「在日特権」とするが、これは意図的に各種制度の理解をねじ曲げた虚構にすぎない。だが橋下市長は、「特別永住」という資格に対して疑問を投げかけた。その根拠は「特別扱いは差別を生む」からだという(注1)。 特別永住は植民地時代に日本国民だった者に適用される在留資格で、歴史的経緯から他の外国人とは異なる法律が適用されているにすぎない(注2)。橋下市長は、これを「特別扱い」と呼ぶことで、在特会の主張に呼応した。いかに極右政治家といえども、これまで特別永住資格の見直しを主張した者はいなかった。橋下市長は、日本の政治家で初めて在特会の主張を後押ししたわけで、それが橋下-桜井会談の本質ということになる。 (注1)『朝日新聞』2014年10月21日付 (注2)金明秀「特別永住資格は『在日特権』か」『シノドス』2014年10月22日 ------------- 樋口直人(ひぐち なおと) 徳島大学准教授、社会学。著書に『日本型排外主義』(名古屋大学出版会)、『日本のエスニック・ビジネス』(世界思想社)、『国境を越える』(青弓社)、『顔の見えない定住化』(名古屋大学出版会)などがある。