懐かしい顔がパドックに帰ってきた。元F1エンジニアが設立したカーボンニュートラル燃料会社がザウバーのスポンサーに就任
かつてマクラーレンのテクニカルディレクターや、メルセデスのエグゼクティブディレクターを務めたパディ・ロウがF1パドックに復帰。ただ、今回はエンジニアとしてではなく、キック・ザウバーのスポンサーとなった合成カーボンニュートラル燃料の会社「ゼロ・ペトロリウム」の創設者兼CEOとして帰ってきた。 【ギャラリー】メルセデスからBMW、アルファロメオ、そしてアウディへ。F1界の”世渡り上手”ザウバーのマシン5選 フェラーリ製パワーユニットを使用するザウバーはシェルの燃料と潤滑油を使用しているが、同業他社にスポンサーシップを売ることは自由。既報の通り、ザウバーはアメリカでの3レースで米ブランドのスノコと契約を結んでいる。 ゼロ・ペトロリウムはザウバーがアウディワークスとなるまでの今後2年間にわたり、チームのマシンにスポンサーとしてロゴが掲出される。 ロウが最後にF1に関わっていたのはウイリアムズ。チーフテクニカルオフィサーを務めていたが、2019年の初めにチームを離れた。 「我々は合成燃料の技術がいかにエキサイティングなモノであるかを伝えるためここにいる」とロウはmotorsport.comに語った。 「もちろん、我々は2026年を見据えていて、その年から(F1に)100%持続可能燃料が導入される。それは第2世代のバイオ燃料だったり、合成燃料であったりする」 「我々は合成燃料に注目している。F1の未来にとっても、世界全体にとっても非常にエキサイティングな要素なんだ」 またロウは、合成燃料が将来的に世界的に重要な役割を果たすと考えている。 「いずれ全世界が化石燃料ではなく、合成燃料で動くようになると言うと、信じられないように聞こえるかもしれない」とロウは言う。 「しかし絶対にそうなる。この問題はおそらく、あまりに先送りにされ過ぎている。しかし合成燃料は化石燃料と同じくらい、あるいは最終的には化石燃料よりも安くなる」 「これが純粋に技術的なソリューションだから、その可能性はある。我々は空気と水と再生エネルギーで燃料を作るから、作れる量に限界はない」 「私が生きている間には実現しないかもしれないが、世界は振り返って、なぜもっと早く実現しなかったのかと言うだろう」 「F1に寿命の長いエンジンが導入されたのが良い例だ。思い起こせば、かつては運が良ければ1回の日曜日で300km走れた程度。今は年間3~4基だ。信じられないくらいだ。そして今、みんな振り返って『なぜそういった制約を導入しなかったんだ?』と思うだろう」 「これは化石燃料と合成燃料のケースでも言えることだ。そのことを知る人はほとんどいないから、我々はそのメッセージを伝えるためここにいる。F1との連携も素晴らしいことだ。我々は同じ文化、革新の文化を共有しているからね」 「F1がハイブリッドのために、バッテリー技術を導入したところを我々は見てきた。12~14年前にF1で行なわれたバッテリー開発がなければ、今日のバッテリー電気自動車はなかっただろう。合成燃料も同じことだ」 ザウバーとのスポンサー契約を通じて、ゼロ・ペトロリウムはどの層に訴求したいのか? とロウに尋ねると彼は次のように答えた。 「どこへ行っても、世界には生の人間が住んでいる。燃料を買うだけの人であろうと、多国籍企業を経営している人であろうと、消費者に変わりはない。世界は人で回っている」 「我々は現状を理解してもらいたい。理解度はとても低いからね。これは我々のメッセージを広めるための世界最高のプラットフォームなんだ」 ザウバーとゼロ・ペトロリウムの契約は現在のところブランドの認知度向上のためのモノだが、ロウは2026年以降に燃料サプライヤーとしてF1に参入することを望んでいる。 「我々は今、F1専用の燃料についてどのF1パートナーとも仕事をしていない」とロウは語る。 「F1燃料はエンジンに高度に最適化されている。単独であれ、他社との共同であれ、我々はそのプロセスに着手することに前向きだ」 「持続可能性や地球温暖化という点以外で、これが完全設計された燃料だということは本当にエキサイティングだ。全ての分子がゼロから製造されている」 「そのため、その可能性は想像に難くない。我々は非常に洗練された化学技術を持っていて、我々が望む分子を確実に作る上で、多くの制御が可能なのだ」
Adam Cooper