新湊の「未利用魚」でフランス料理、漁師「グロテスクな顔の魚がおいしい料理になり衝撃」
プロジェクト「きときとのその先へ」
富山県射水市新湊地区のフレンチレストランと漁師、高専生が手を組み、地元の水産業を盛り上げるプロジェクトを始めた。市場に出回りにくい「未利用魚」に着目し、コースメニューを開発。新湊の海の幸を発信するとともに、水産資源の持続可能性も高めていく。(松本彩和)
プロジェクトには、「レストランSazan」(射水市海竜新町)と漁師の八ツ橋佳太さん(40)、地域の課題解決を研究する富山高専アントレプレナー研究同好会が参加。「きときとのその先へ」と名付け、未利用魚の活用や若い層への魚食PR、震災で被害を受けた地元水産業の応援などに取り組む。
以前からSazanは八ツ橋さんが締めた魚を料理に使うなど、交流があった。プロジェクトのきっかけは、1年ほど前に八ツ橋さんから未利用魚の存在を教えてもらったこと。網にかかっても、すぐ悪くなったり骨が多く調理しづらかったりなどの理由で多くの魚が廃棄されており、八ツ橋さんも「何とかならないか」と考えていた。
また、近年の海水温の上昇により、魚種豊富な新湊でも漁獲量が減り、これまで水揚げされていた魚も取れないという課題もあった。貴重な水産資源を持続可能なものにするために、両者は未利用魚を生かした料理の開発に着手。八ツ橋さんが魚を提供し、シェフの黒崎俊則さん(57)が料理を担当。プロジェクトに富山高専生も加わり、若年層へのPRを担うことになった。
料理で使う未利用魚は、「エソ」と「イネゴチ」だ。エソは練り物に使われるが、骨が多く料理には向かないと敬遠されてきた。イネゴチは臭いが出やすく腐りやすい。ただ、エソはさっぱりとしてうまみがあり、イネゴチも上品で癖がない。黒崎さんは「手間はかかるが、しっかり処理すればおいしく食べられる」と話す。
完成したコース「フリュイドメール(仏語で海の恵み)」は、新湊の魚介をふんだんに使った料理で構成した。エソは燻製(くんせい)に、イネゴチは揚げてマリネにし、前菜の前に提供されるアミューズの中に盛り込んだ。また、エソは前菜にも使用。ふんわり滑らかなムースに仕立てた。このほか、メインの鮮魚のポワレ(焼き物)には、八ツ橋さんが鮮度を保つ「神経締め」で締めた魚を使う。