神戸市が書家・井茂圭洞氏を名誉市民に 小磯良平氏らに続き10人目 「思いと作品が接近してきた」
神戸市は、同市出身・在住の書家、井茂圭洞(いしげ・けいどう)=本名・井茂雅吉(いしげ・まさきち)=さん(88)に名誉市民の称号を贈ることを決定、このほど同市役所で贈呈式が開かれた。神戸市の名誉市民は10人目で、これまで同称号を贈られたのは、原口忠次郎さん、宮崎辰雄さん、笹山幸俊さん(いずれも元神戸市長)、小磯良平さん(洋画家)、朝比奈隆さん(指揮者)、本庶佑さん(医学者)ら。 【写真】井茂圭洞さんの作品 井茂さんは伝統的な書の美しさと、現代の美的感覚を備えた「散らし書き」と呼ばれるかな書きの手法で評価されている、わが国を代表する書家。県立兵庫高校在学中に深山龍洞(みやま・りゅうどう)さんに師事、1961年、日本美術展覧会(日展)で初入選を果たした。その後、日本芸術院賞や日展内閣総理大臣賞など数々受賞、2018年に文化功労者、2023年には文化勲章を受章した。日本書道文化協会会長をはじめとする複数の書道団体で要職を務めるとともに、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に書道文化を登録するための活動にも注力している。 贈呈式では久元喜造市長が「称号の記」などを手渡し、「わが国を代表する書家である井茂先生に贈呈できることは、大きな名誉。たくさんの若い世代が書道に親しむことができるよう、お力添えをいただきたい」と要望した。 報道陣に感想を問われた井茂さんは、「たいへんな称号をいただいた。その器でないことは私自身分かっている」とし、「書を70年間続けてやってきたがそのうちの50年は基礎の勉強。後の20年、自分なりの思いを作品に表してきた。思っていることと作品がやっと接近してきた」と述べた。 今後については「私はかなが専門ということになっているが、漢字でもかなでもない、先達の作品とは違ったものを書きたい。それが私の夢。実現するために与えられた人生を使いたい」と意欲を示した。 中高時代、トアロードから修法ヶ原、摩耶山、六甲山へとよく歩いて登ったことを振り返り、「山上から見る神戸港や大阪湾の美しさ。神戸市民として誇りに思っていたし、神戸の自然を、神戸を愛していた。そのことだけが今回のこと(名誉市民の称号)に値すると思う」と語った。
ラジオ関西