50歳代「おひとりさまの老後」頼れる人がいなければ【生活保護】を検討できるのか
年金がない高齢者であれば「生活保護」を受給できるの?
年金生活者の生活苦などがメディアで多く取り上げられている昨今、「老後は生活保護をもらった方がよさそう」「年金よりも生活保護の方が受給額が大きいのはおかしい」といった声も少なからずあります。 しかし、高齢者であれば生活保護を確実に受給できるわけではなく、生活保護を受給するには数々の条件があります。 生活保護の主な受給要件を以下の表から確認しておきましょう。 ・資産の活用:預貯金、生活に利用されていない土地・家屋などがあれば、売却などし生活費に充てる ・能力の活用:働ける人はその能力に応じて働く ・あらゆるものの活用:年金や手当など他の制度で給付を受けることができる場合はそれらを活用する ・扶養義務者の扶養:親族などから援助を受けられる場合は援助を受ける 生活保護を受給するにあたって、生活に利用していない土地がある人は売却しないといけないケース、あるいは資産価値が高い持ち家に住んでいる人は、その家を手放さなければならないケースなどもあります。 さらに、原則として生活保護を受ける際は、親や兄弟をはじめとする親族から援助を受けられるかどうかも調査されます。 親族内で生活に困窮していることが伝わるだけでなく、心配や負担をかけることもあるでしょう。
生活保護受給中は収入の状況を毎月申告しなければならない
生活保護の受給中は収入の状況を毎月申告しなければなりません。 高齢者のなかには趣味を兼ねて、小物の販売や習い事の先生など収入を得ている人もいるかもしれませんが、こうした収入も申告の義務が生じます。 また、福祉事務所のケースワーカーの訪問調査もあります。 一定額以上の貯蓄は認められないので、お金を貯めて旅行に行ったり、高価な商品を購入したりすることも基本的にできません。 持ち家や自家用車については要相談となるため、この点も注意が必要です。
まとめにかえて
国民年金の老齢年金受給者の平均年金月額は2022(令和4)年度末現在で5万6000円、2022(令和4)年度新規裁定者で5万4000円です。 この金額で老後の住居費や医療費をまかなわなければなりません。 一方、生活保護の場合、在住エリアや健康状態などによるため支給額は一概には言えないものの、「住宅扶助」とは別に「生活扶助」として6~7万円前後支給されることもあります。 額面のみを見ると生活保護の方がいいように思うこともあるでしょう。 しかし、本記事で解説したように、生活保護を受給するには貯蓄や資産価値のあるものの所有は認められず、ケースワーカーとの定期的な面談に対応しなければなりません。 そもそも生活保護は厳しい審査があるため、必ず受給できるものではありません。あくまでも、困窮の程度に応じた保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障することで、その自立を助長する制度です。 最後の砦として知っておく必要はあるものの、老後の資産形成については冷静に考える必要があるでしょう。
参考資料
・内閣府「令和6年版高齢社会白書」 ・厚生労働省「生活保護制度の現状について 」 ・厚生労働省「生活保護制度」 ・厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」 ・厚生労働省「R5.5生活保護制度に関するQ&A」
西田 梨紗