浸水隠し「クイーンビートル」運航、JR九州高速船を捜索…福岡海上保安部が船舶安全法違反などの疑いで
JR九州の子会社「JR九州高速船」(福岡市)が、博多―韓国・釜山港を結ぶ旅客船「クイーンビートル」の浸水を隠して3か月以上運航を続けていた問題で、福岡海上保安部は17日午前、船舶安全法と海上運送法違反の疑いで同社と船の捜索を始めた。 【表】JR九州高速船の浸水隠蔽から発覚までの経緯
一連の問題を巡っては、隠蔽を指示したJR九州高速船の社長が解任された。国土交通省も同社に対して全国初の「安全統括管理者・運航管理者の解任命令」を出したが、海保は実態の解明には強制捜査が必要と判断したとみられる。
海保などによると、同社側は今年2月、船内への浸水を認識しながら必要な臨時検査を受けず、約3か月にわたって営業を継続。国交相に届け出た安全管理規程に基づかずに運航した疑いが持たれている。
福岡市の博多港国際ターミナルにある同社の事務所や、港に接岸中の船には、17日午前9時頃から海保の職員らが相次いで捜索に入った。JR九州は「真摯に対応する」とコメントした。
8月に抜き打ち監査、運休続く
浸水隠しは、国土交通省による8月の抜き打ち監査で発覚。隠蔽を指示した田中渉社長(当時)が解任され、事態を重く見た国交省も厳しい行政処分に踏み切った経緯がある。
同省やJR九州によると、JR九州高速船は今年2月、クイーンビートルの船首部分に2~3リットルの浸水を確認した。だが、田中前社長の指示で同省に通報せず、法令で義務づけられた検査や修理を行わなかった。
さらに同社は浸水の事実を伏せ、ポンプで1日あたり2~20リットルほどを排水しながら営業を継続した。発覚を免れるため、設備の不具合などを書き込むための航海日誌や整備記録に「異常なし」と虚偽の記載をした上で、社内向けの「裏管理簿」を別に作成して実際の浸水量を記録していた。
5月に入って浸水量が急増すると、翌日に船底の警報センサーが作動しないよう位置をずらす工作も行った。それでも警報が鳴るほど大量の浸水が起きた段階で、初めて異常を確認したように装って同省に報告していた。船首部分に入った亀裂は1・1メートルにも達していたという。