画面に貼りついて監視するデイトレードのギャンブル的なイメージ…副業としての「FX」は成り立つのか?
■積み立てNISAやiDeCo、“右向け右”な日本の投資傾向への課題
近年投資を始める人は増えている。しかし、「やっていない人はやばい!」という煽りや、「みんなやっているから…」という意見も多く見られ、日本人特有の“右向け右”な空気が蔓延しているように感じられる。この独特の空気感について、黒田さんはどのような印象を持っているのだろうか。 「詐欺の件でもお話ししましたが、人って楽な考え方に寄りかかりたくなってしまうんです。自分にとって聞こえのいいことを声高に自信満々に語っている人がいると、『この人すごいな、ついていこうかな』と思ってしまうじゃないですか。今の投機投資を勧める流れもそういうニオイがあるかなとちょっと感じてしまっていて…新NISAやiDeCoなどの選択肢を提供してくれるのはすごくいいことだと思うんですけど、有効活用するためには、そこにお金を入れることのリスクを理解しなくてはいけないと思うんです。そういうところが置いてきぼりになって、『どんどんやれやれ』という空気になっていることには危機感を覚えますね」 FXに限らず、投資にはリスクがつきまとう。日経平均株価に連動している投資信託は、日経平均が下がれば当然、価値が下がっていく。局面が変われば、いったんお金を引き上げて、新しい投資信託に入れるなどのアクションを起こさなければならず、ただ黙ってお金を入れておくだけで必ず儲かるという都合の良いものではない。しかし、いざというとき、そのアクションを適切に行える人はどのぐらいいるのだろうか。「みんながやっているから」という理由で始めた人は、「みんながやめるまで」放置し、結果的に資産を減らしてしまう可能性があるのではないだろうか。 「30代40代のこれまで貯金しかしてこなかった人に、改めて投機投資を勉強していくという意識をどうやって向けていくか、それも正しい方向性で学習する環境がどう整うんだろうかというのは、懸念しているところではあります。はっきりいって今のSNSの情報は劣悪もいいところだなと思いますし。積み立てNISAにしても、枠は制度が変わらない限りそこにあるので、自分の判断基準で決定できるようになってから始めてもいいんじゃないかと思います。今、「やれやれ」と言われて、唯々諾々と始めてしまうことが一番、やってはいけないことだと思います」 投資にほとんど興味のなかった人が、周りの雰囲気に押されて誰かが勧めている金融商品に手を出す。これでは、「何かわからないけど、儲かった」「とりあえずやっててよかった」となるかどうかは運しだいということになり、ギャンブルと変わらない。 「自分のやっていることにはどういうリスクがあって、そのリスクをリターンにするためには、どういう意識をもって取り組まなければならないのか、金融リテラシーの低い方には、そういう考え方を1つ1つ説明していく必要があると思っています。そのためにも、私自身が勉強を重ねて、そこで得た情報や知見を発信し続けたいと思います。そして、私の話をちゃんと真面目に聞いてくれた人が、納得のいく投資スタイルを身に着けて、納得のいく結果を出してくれれば差し当たっては充分かなと思います」 経済的に自立し、より良い生活を送るためには、お金に対する知識や判断力を鍛えなければならない。そのための勉強をすることが、詐欺の抑制にもなるし、資産を増やすことにもつながる。黒田さんの話にあった「調査・確認・検証の必要性」や「リスクを取る範囲を決めること」は、FXに限らず、どのような投資にも当てはまることだ。周りの空気に流されるまま、とりあえず資産運用を始めてしまったと思う人は、今一度、情報収集をし、自身の資産運用を見直してみてはいかがだろうか。 取材・文/森下なつ PROFILE/omukuroファーム ・ kuro(黒田雄士) 2020年からDMMオンラインサロン『omukuroファーム』を立ち上げ、延べ1000人以上のメンバーに培ってきたトレード技術を提供しながら、現在も精力的に活動中。2023年からは、FXで築いた資産をベースに株式・先物投資にも注力し、その情報共有も開始。現在FXの運用額は500万円、株・先物投資は1000万円超。年間総利回りは200%。投機・投資の経験を活かして、国内の経済・市況の解説などもメルマガ等を通じて行っています。