トランプ真似た尹錫悦の戦略、通じるか?【The 5】
【ザ・ファイブ:The 5】内乱首魁の分析と2度目の採決の見通し
「私たちには時間がないのであって、関心がないわけではない!」 生活に追われて忙しい、ニュースを見る時間もないあなたのために準備しました。ニュースが教えてくれないニュース、見れば見るほど知りたくなるニュースを5つの問いにまとめました。The 5が問い、専門家が答えます。 内乱罪被疑者の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が昨日(12日)の国民向け談話で、非常戒厳の宣布は「司法審査の対象にならない統治行為」だと述べて、内乱容疑を強く否認しました。尹大統領は自ら作成した原稿を29分間にわたって読みあげ、非常戒厳宣布の正当性を主張してから、「今、野党は(このような正当な)非常戒厳宣布が内乱罪に当たるとして狂乱の剣の舞を舞っている」と非難しました。早期辞任はせずに任期を全うするとした談話の発表直後、与党「国民の力」のハン・ドンフン代表は尹大統領の除名・離党に向けた党倫理委員会の招集を指示するとともに、「党の方針として弾劾に賛成しよう」と述べました。「弾劾賛成」の立場を明らかにした国民の力の議員が可決に必要な8人に達したことで、明日(14日)に予定されている国会での2度目の採決で弾劾訴追案が可決される可能性が高まっています。尹大統領はなぜあえて弾劾を招く談話を発表したのでしょうか。市民が寒い街頭に立つのは、明日が本当に最後でしょうか。クォン・テホ論説委員室長に聞きました。 [The 1]2度目の採決の直前に尹大統領が「自爆」したのには、何か理由あるのでしょうね? クォン・テホ室長:米国のドナルド・トランプ次期大統領を参考にしたのではないでしょうか。トランプは2020年11月の大統領選挙で敗北した際、不正選挙疑惑を提起しつつ、数多くの訴訟を起こしました。そして12月19日から1月6日までホワイトハウス前で行われる「米国を救え(Save America)」集会を宣伝するとともに、集会では「私たちは屈服しない」と述べました。その直後、一群の極右勢力が議会議事堂に乱入しました。一方では訴訟を準備しつつ、もう一方では極右勢力を扇動する。今、尹大統領が取っている行動にそっくりです。「国民と共に闘う」と言っていますが、この「国民」とは誰のことを指しているのしょうか。極右勢力に「自分を支持するために決起してほしい」と訴えているように思えます。国民全体に対する談話ではなく、極右の暴動を誘発する談話だということです。本当に想像以上に危険な人物です。 それと、自身が戒厳令を宣布せざるを得なかった論理を説明していたようですが。談話には「北朝鮮のハッキング攻撃」、「国家安保を脅かすスパイの脅威」という表現が出てきますよね。戒厳は国家危機においてのみ宣布できるということに、論理的に合わせるための発言というわけです。今後あるであろう法廷闘争で自らの罪を軽くするためのものだと思います。「北朝鮮の攻撃と野党の暴挙で国が危機に陥るだろうと思い込んだ」という主張を展開したうえで、最後には弁護士たちが心神耗弱を主張するかもしれません。普通、弁護士は自身が弁護している被疑者がこのようなとんでもない主張をすると、心神耗弱を言い出すんです。 しかし、逆にあの談話は、法廷では罪を重くされる可能性が高いと思います。内乱の首魁(しゅかい)という重大な犯罪容疑がかけられている状況で、戒厳令を宣布したという行為に対する反省がまったくないわけですから。完全に、自分の利益のための法的闘争の手段だと思います。事実上、極右勢力の暴動を扇動したという点で、新たな内乱を企てているものだとも考えられます」 [The 2]尹大統領は「4月の総選挙」は操作されたと主張し続けています。総選挙になぜ執着するのでしょうか。 クォン:野党「共に民主党」が圧勝したという総選挙の結果が、いまだに受け入れられないのです。「操作されたことを自分が明らかにすれば、国民も戒厳を理解してくれるだろう」と考えたようです。とても危険な思考です。また、ミョン・テギュン氏が前回の大統領選挙の際に尹大統領に有利になるように世論調査を操作したという疑惑があるでしょう。だから総選挙でも相手(民主党)が世論調査を操作したという疑惑を抱いたのではないか、という気もします。選挙管理委員会と、キム・オジュン氏が経営する世論調査会社「世論調査コッ(花)」を家宅捜索しろと指示しましたよね。4月10日の総選挙での惨敗は世論調査コッによる世論調査のせいだと思い込んでいたようです。ユーチューバーの中でも非常に極右のユーチューバーたちの主張です。妄想に陥っているような気がします。 尹大統領は、もうかなり前から一般人の合理的な思考から外れていると思います。2030釜山(プサン)万博の誘致競争に飛び込んだ時、誰もがだめだと言って止めたんです。尹大統領は最後まで成功すると信じていました。だから無理に引っ張り、結果はとても悲惨なものでした。去年10月のソウル江西(カンソ)区長補欠選挙でも、キム・テウ候補を無理やり赦免までして押し込みましたが、結局は負けでした。あの時もみんな止めたのに、大統領は当選を固く信じていたそうです。 [The 3]内乱に加担した人々の中で最も悪いのは誰ですか。順位をつけるとしたら? クォン:いちばんは内乱の頭目、尹大統領です。司令官たちに電話するのはもちろん、警察庁長にあらかじめ逮捕者リストを渡すなど、非常に具体的に戒厳を指揮していたわけですから。大統領に戒厳を建議し、総指揮を担ったキム・ヨンヒョン前国防部長官が2番目。ヨ・インヒョン国軍防諜司令官も政治家を逮捕・拘禁しろと指示しましたよね。戒厳時に国情院の第1次長と警察庁長に電話して国会議員の逮捕のために位置追跡を要請しましたし、選管のサーバも確保せよと命じています。核心をなす内乱容疑者3人組は、奇妙なことに全員が(尹大統領と同じ)冲岩高校出身の先輩後輩の間柄、「冲岩(チュンアム)派」でもあります。彼らは今年の初夏に夕食の席を設け、戒厳について話し合ったそうです。同窓の集まりだと言って、よく集まって酒席を持っていたようです。 ヘリに乗って国会にやって来た第707特殊任務団の司令官でもあるクァク・チョングン前陸軍特殊戦司令官と、ソウル郊外から装甲車に乗ってやって来たイ・ジヌ首都防衛司令官は、順位をつけることに大きな意味はないように思えます。ただ、この両名は自身の罪を認めて謝罪したという点で、前の3人組とは異なります。戒厳宣布前の国務会議に出席していた11人の国務委員も、賛成したか反対したかとは関係なしに、戒厳を防げなかったという責任から決して自由にはなりえないと思います。 [The 4]韓国は事実上の死刑廃止国ですよね。尹大統領の内乱首魁罪が確定すると死刑に処されるのでしょうか。 クォン:全斗煥(チョン・ドゥファン)、盧泰愚(ノ・テウ)にも死刑が言い渡されましたが、後に無期懲役に減刑され、最後は赦免されています。でも、あの時代の戒厳では人が死んでいますよね。尹大統領の弁護人が「(今回の戒厳令では)負傷者はいないではないか」と主張すれば、無期懲役が言い渡される可能性もあります。しかし内乱後の尹大統領の態度をみると、司法府が象徴的に「今後二度とこのようなことが起きてはならない」という意味を込めて死刑を宣告する可能性も、完全に排除することはできないと思います。実際に執行するかどうかは別として。 [The 5]14日の国会弾劾訴追案、可決されるでしょうか? クォン:弾劾される可能性は高いです。12日までに公に「弾劾賛成」の立場を表明している国民の力の議員は、可決に必要な8人に達しています。明日の投票では20票前後の同調があるのではないかと思います。今日発表された尹大統領の支持率と、弾劾賛成についての韓国ギャラップの世論調査が重要です。先週は16%だった尹大統領の支持率は、今週は11%に下がりました。尹大統領の弾劾に賛成だとする回答は75%です。国民からそっぽを向かれていることが改めて確認されたのですから、国民の力の議員たちの立場からすると、可決の方へとさらに振れると思います。 クォン・ジダム記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )