【南シナ海で中国の新たな妨害活動】強化すべき「中国不法行為」の訴えと、フィリピン支援
中国の悪辣な海上行為を明るみに
セカンド・トーマス礁周辺における妨害活動に続き、今度はその東約60キロメートルにあるサビナ礁(フィリピンの EEZ 内に位置する)が中国による妨害の舞台である。このところ少なくとも3回程度、フィリピンの補給活動を妨害しようとする中国海警の船舶がフィリピンの巡視船に意図的に突っ込む事件が発生しており、8月31日には日本から供与されたフィリピンの大型巡視船の船体が損傷した。 中国の妨害行動を抑止するためのフィリピンの努力の一つが「透明性イニシアティブ」であり、中国の悪辣な行動を明るみに出すことを狙いとしている。この努力は、国際世論に訴えること、および国内世論を方向付ける上で一定の成果を挙げているのではないかと思う。 他方、この論説はフィリピンが中国の妨害を排してセカンド・トーマス礁に座礁させている揚陸艦Sierra Madraを要塞化したことをもって、フィリピンの「透明性イニシアティブ」の成功に数えているようであるが、そもそも Sierra Madraは瓦解が心配される老朽艦で、実効支配の証として維持されているに過ぎず、これが要塞化されたという実体はないのではないかと思われる。 先頃、フィリピンを訪問したパパロ・インド太平洋軍司令官は、食料などの補給物資の輸送に当たるフィリピンの艦船のエスコートを検討する用意はあるとし、エスコートは「相互防衛条約における完全に合理的なオプション」だと述べたが、彼の発言の意図は必ずしも明らかでない。
一方、フィリピンのブラウナー国軍参謀総長は、8月 27 日のパパロ司令官との共同記者会見で、「フィリピン軍の態度はまずは自助である」「我々のミッション―補給と兵の交替―を達成するためにすべてのオプションを試す」「その上で、我々自身でやり遂げることが無理となった時に他のオプションを探求するであろう」と慎重な姿勢をのぞかせた。
日本は引き続き巡視艇の供与を
いずれにせよ、米比相互防衛条約の見直しを伴うか否かを問わず、米軍が南シナ海におけるフィリピンの活動に直接関与することは大きなリスクを伴う。中国の「グレーゾーン」の妨害を抑止し、これに対抗する妙案はないが、最も実際的で効果的な道はフィリピンに巡視艇を供与してフィリピンの海上保安能力の向上を支援することであろう。 日本はこれまでにODAで巡視艇12隻、高速艇13隻を供与し、更に大型巡視船5隻を追加して供与する計画と承知するが、日本の貢献は高く評価されるべきものである。
岡崎研究所