【マンガで学ぶ相続手続き】相続手続きは相続人全員で!連絡先のわからない相続人との手続きの進め方について相続の専門家が詳しく解説
こんにちは。G1行政書士法人 代表の嶋田裕志です。相続・遺言専門の行政書士として10年以上、年間1000件を超えるご相談にお応えし、行政書士の範囲だけでなく、相続税や不動産など相続に関する幅広い知識をもって各専門家とともに相続手続きを代行しています。 【漫画と解説】ある日家族が亡くなった――連絡先がわからない相続人と手続きを進めるためには 突然ですが、皆さんは、身内の方を亡くされた経験はありますか? 亡くなった人が近しい関係であればあるほど、皆さんは「当事者」として死亡後の手続きに関わることになります。具体的には、その亡くなった瞬間から、通夜、葬儀、役所での手続きなど、とにかく時間に追われながらたくさんの手続きをしなければなりません。 悲しくて、寂しくて、つらくて、耐えがたい状況であっても、手続きは待ってくれません。特に死亡後すぐの手続きには期限があるものも多く、慣れない手続きで心身共に疲れてしまい、体調を崩してしまうという方もたくさんおられます。 ここでは、いざ皆さんが「当事者」になったときに困らず相続手続きができるよう、詳しく解説いたします。 今回は、相続人の中に連絡先のわからない人がいた場合に、どのように相続手続きを進めていくかについて、詳しくご説明します。 みなさんの家族や親族を頭に思い描いてみてください。たとえば両親、子ども、兄弟姉妹、おじやおば、甥や姪などです。最近会ったり連絡を取ったのはいつですか?住所や電話番号はわかりますか? 仲が悪いわけではない親族であっても、住所や連絡先がわからないこともあるのではないでしょうか。ましてや、疎遠であったり関係が悪かったりすれば、何年も顔を合わせていないことも珍しくありません。 遺産相続手続きの基本は、「相続人全員で協力して手続きを進める」ことです。連絡先がわからなかったり、疎遠でどこにいるかもわからない相続人がいる場合でも、必ず連絡を取り、一緒に手続きを進めていかなければなりません。 ■連絡先のわからない相続人の住所は戸籍の附票で確認できる 役所や年金事務所などで行う一部の手続きを除き、相続手続きを進めるためには原則として相続人全員の協力が必要です。しかし、連絡先のわからない相続人がいる場合は、協力をお願いする以前に、そもそも連絡を取ることができません。そのような場合に彼らの連絡先を知る手段が「戸籍の附票」という書類です。 戸籍の附票とは、本籍に紐づいた住民票の住所の履歴が全て掲載されている書類で、その対象となる人の本籍地がある役所で取得可能です。 では、附票を確認して連絡先のわからない相続人の住所がわかった後、その住所に対してどのような行動をとればよいのでしょうか。 ■最初は挨拶程度のお手紙から 戸籍の附票に載っているのは住民登録されている住所だけで、電話番号などは載っていません。住所がわかれば手紙を送る、もしくは直接訪問することができますが、私の経験則としては、まずは手紙を送ることをおすすめします。相手の方との関係性にもよりますが、突然訪問したことによってトラブルに発展してしまった場合、その後の手続きがより困難になってしまうかもしれないからです。 手紙の内容については定型文のようなものはありませんが、最初から込み入った内容は記載せず、 ・相続が開始したこと ・今後の手続きの話がしたいので連絡が欲しいこと ・自分の電話番号やメールアドレスなど希望の連絡方法 といった程度にとどめておきましょう。 ときどき「相続放棄をしてほしい」といった内容を最初の手紙に書く方がおられます。手紙を受け取った側の気持ちを考えれば、最初からそんな手紙が送られてきたら良い気持ちはしませんよね。最初はやはり軽いご挨拶といった内容の方が賢明です。 また、手紙を送れば返事が届く、と考えるのが普通ですが、今回は連絡先がわからなかった人への手紙です。親密なお付き合いのある人への手紙ではありませんので、返事が届かないことも想定しておかなければなりません。 手紙を送った後の流れは、次の3つが考えられます。 1:手紙が受け取られ、連絡がくる 2:手紙は受け取られたが、連絡がこない 3:そこに住んでおらず、手紙が戻ってくる それぞれのケースによって、その後の進め方が大きく異なります。 なお、手紙を送る際は、簡易書留など追跡番号で相手の方が受け取ったことを確認できる方法で必ず送りましょう。 ■1:手紙が受け取られ、連絡がくる 誰もが願う、一番理想的なケースです。連絡が取れたら、これまでの経緯や相続に関する詳しい話を伝えましょう。財産については細かな質問をされることも当然あると思いますが、相続権があることは確かですので、包み隠さず、すべてを伝えるようにしましょう。そのうえで、相続するかどうかを判断してもらうことになります。 仮に相手の方が相続しない場合も、口頭での返答だけでは対外的に証明することができないため、家庭裁判所で相続放棄の手続きをしてもらう、または遺産分割協議書への署名捺印と印鑑証明書を提出してもらうことが必要です。相続しない場合でも協力が必要になることは忘れずに伝えておきましょう。 ■2:手紙は受け取られたが、連絡がこない 追跡番号で届け済であることが確認できれば、そこに住んでいることは間違いありません。しかし連絡がこないということは、関わりたくないと思っていたり、詐欺を疑っていたりするかもしれません。文面を変えて再度手紙を送ることで連絡がくるかもしれませんが、状況や関係性によっては相手の方のお宅を実際に訪問してみるのも一つの方法です。 それでも連絡が取れない場合、または、連絡が取れたとしても手続きに協力をしてくれない場合は、家庭裁判所で遺産分割調停をすることになるかもしれません。相続手続きとは別に複雑な手続きを踏みますので、弁護士に相談してみましょう。 ■3:そこに住んでおらず、手紙が戻ってくる 送った郵便に「あて所に尋ねあたりません」というハンコが押され、未開封のまま戻ってくるケースです。表札がなく、郵便局のデータベースにその住所と名前が登録されていない場合に、このような形で差し戻されます。 当然ながら一番の問題はその住所に住んでいないということであり、それ以上新しい住所を追いかけることもできません。 この場合は、家庭裁判所でその人の代わりになる人(「不在者財産管理人」といいます)を選任してもらい、その代理人を交えて遺産分割協議をすることになります。それ以外の方法で手続きが進む可能性もゼロではありませんが、複雑な手続きになることは間違いありませんので、弁護士に相談してみましょう。 ■状況によって手続きの進め方は異なるが、ゴールは必ずある 連絡先のわからない相続人がいる場合の進め方を3つのケースでご紹介しましたが、いずれのケースであっても、最終的には相続手続きを終えることができます。 連絡先のわからない相続人がいるために、凍結した銀行口座をずっとそのまま放置してしまっている、というご相談もたくさんお聞きします。しかし、だからといって何も行動をしなければずっとそのままで、どれだけ時間が経っても自動的に口座が解約されて払い戻しされるということはありません。 まずは行動に移すこと、そして、もし自分たちで手続きをするのが難しい場合は専門家に相談することで、必ず解決に向けて進むことができます。今まさにこういった状況で困っておられる方も、ぜひ今回お伝えしたことを参考にしていただければと思います。