統合失調症の姉を家に閉じ込めて20年以上 治療を拒んだ高学歴両親、説得し続けた弟がカメラでありのままを記録
両親はともに医師免許を持ち、細胞膜を研究する研究者だ。精神医学の知識もある程度は持っていたが、娘の病気を認めようとせず、精神科を受診させなかった。監督は病院に連れて行った方がいいと考えていたが、「姉の尊敬の対象は父親。だから父親が病院に行くことを認めない限り、姉も病院に行こうとしなかった」と振り返る。 映画を観た有識者から「(親が拒んでも、弟である藤野監督が)無理やり病院に連れていけばよかったのではないか」との指摘を受けたという監督。実際には、何度もそう考えたことがある、と言った。 「姉は過去に、父が運転していた車から走行中に飛び降りたことがあった。そもそも入院させたとしても両親が連れ帰る可能性が高かった」
両親の高齢化でやっと医療につながる
自力で病院に連れていくことが現実的には実行不可能であることを悟った監督が導き出したのが、「父親を説得して、姉を受診させる」という“答え”。だが、最終的に両親を説得するのに25年という時間がかかってしまう。 状況を変えたのは、両親の高齢化だった。 「正直な話、母親が認知症のような症状が出てきたときに、(姉を受診させる)チャンスかもしれないと思いましたね。実際、父親は母親と娘の世話で寝る時間もなくなって、疲れ切っていました」 もう自分ではどうしようもない状況になったのか、最終的に父親は娘の受診を許し、姉は入院した。入院中に行った投薬治療のおかげで、症状がコントロールできるようになって家に戻って来た。 症状が落ち着き、自分らしい人生を歩み出そうとしていた姉に残酷な運命が突きつけられる。映画のテーマは「都合の悪い事実を受け入れられるか」。スローニュースでは。姉の死を無駄にしたくないとして記録を公開した藤野監督の思いを詳しく聞いている。
佐藤えり香
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