「チームに馴染めない部下」の不安を解消するには? 上司が果たすべき役割
読み合いを「表面化」させる効果
新しい部下がリラックスして仕事に集中できるように、「読み」を適正範囲にまで落としたいことでしょう。そして、そのためにできる最善のことは、おそらく読み合いをできる限り早く「表面化」させることだと思います。 つまり、新しい部下が来ることで自分が抱いている期待と不安を、後ろ手に隠しておくのではなく、思い切って相手に正直に伝えてしまうのです。その代わり部下からも、どんな期待と不安を持っているのかを話してもらいます。 3か月前、弊社にも新人が中途で入社しました。手前味噌になりますが、最初の2か月ぐらいはとにかくお互いの期待と不安が表に出るように意識しました。 彼にはメンター(先輩として基本的な仕事の進め方やスキルを教える人)が付き、コーチが付き、そして当然上司も付きました。がんじがらめにしたかったわけではなくて、とにかく何でも話したかったし、話してもらいたかったのです。裏でお互いにいろいろと思うようなことをしたくなかったわけです。 それでもよく見ていると、彼の中にさまざまな疑問が起こっているのがわかります。すると、その場ですぐに彼をつかまえて話をします。「少し迷いがあるように見えるけど、どうなの?」。2か月間は目の端に必ず彼を入れていました。 やっと先月です、気負いでもなく、いい顔を見せたいからでもなく、彼が本当にすっきりとした笑顔で「最近、のってきましたよ」と言ったのは。もうそこまで頻繁に彼を見なくても良いかなと思った瞬間でした。 新しい環境になじむのは口で言うほど簡単なことではありません。お手軽に関係をつくれるかというとそんなことはないでしょう。とにかく話して話させる、すべてをオープンにしていく――それがメンバーをチームに溶け込ませるということだと思います。
鈴木義幸([株]コーチ・エィ代表取締役 社長執行役員)