矢作調教師の〝夢〟とは？

坂井瑠星（右）が騎乗して凱旋門賞に挑むシンエンペラー（平松さとし氏提供）

　――かなえたい夢は 　矢作　究極の目標は競馬というスポーツの絶対的地位向上。例えば私がマルシュロレーヌでブリーダーズカップディスタフを勝ったときに、テレビの生中継もなかった。自分としては、アメリカの最高峰のＧⅠを勝ったのに非常に扱いが小さかったので、そういったところを含めてもっともっと競馬がメジャーといわれるスポーツになれるように努力していきたい。個人的にはもちろん、ヨーロッパのレースを勝てていないので（勝ちたい）。なかなか日本は特殊なシステムで、内厩制の特殊なシステムによって競馬が繁栄している部分はあるが、自分は２８馬房、管理馬７０頭。世界の大調教師は３００頭、４００頭と管理されている中で、この戦力で戦っていくのはなかなか難しいところがある。このあたりがもう少し改善されると、もっと戦えるのでは…と思っています。 　 　――追いかけてきた背中は 　矢作　私の競馬のマスターはやはり父（※２）ですし、あとはやはりオーストラリアのネヴィル・ベッグ師（※３）、自分がやりたいことを先駆けてやられているなと思うのは先輩調教師の森秀行調教師。ただ、誰が目標というのではなくて、自分の道、自分が思ってきたことをやってきた。 　 　――競馬サークルを目指す若い人へ 　矢作　今の日本の競馬は世界的にもレベルが高い。競馬というコンテンツ自体が非常に魅力的で、一緒に仕事をしてもとても楽しいものではないか、夢がある、そういう仕事だということ。もうひとつは日本の特殊事情で（職場に）女性が非常に少ないので、若い女性にもっともっとわれわれの社会に加わってほしいと強く希望します。（リクルートは？）女性にはモテないので（笑）。これから人口が減っていく中で、女性の労働力は絶対に必要になるし、女性が多く加わることによって競馬社会、厩舎社会がもっと魅力的になっていく。 　――〝世界の矢作〟と親しまれている 　矢作　調教師の仕事でまず第一には馬が無事で元気でが一番大事。それに結果がついてくるよう精一杯努力します。 〈注・原文に一部修正、加筆してあります〉 ※１…講演は三嶋牧場（北海道浦河郡）取締役・三嶋健一郎氏を交えたディスカッション形式で行われた ※２…大井競馬場所属の元騎手・元調教師である故矢作和人氏 ※３…オーストラリア修業時代に師事 〈追記〉ＪＲＡは９月２３日の定例会見で２５年度の開催日割を発表。夏の暑熱対策として、今夏は新潟に限定して２週間行った競走時間帯の拡大を、来年度は７月２６日（土）からの２回新潟、３回中京で４週間にわたって行うことが決まった。 　ナイターおよび早朝開催、札幌・函館の同時開催の可否などさまざまな方策を検討しているとしたうえで、総合企画・総務担当の植木聡理事が説明。ナイター開催については、１＝馬主、厩舎関係者、マスコミなど広範囲に与える影響（移動や輸送、滞在の増加による経済的負担）、２＝ウインズおよびパークウインズが全国にあり、土日の夜間営業に対する近隣住民の理解、３＝地方競馬等への影響、４＝開催に必要な人員の確保…といった観点から課題が多く、早朝開催に関しても同様の課題があり現実的な解決策にはならないとした。 　札幌・函館の同時開催については、出走馬の在厩馬房が北海道内だけで２０００～３０００必要となり、現状の２場で１４７２馬房と大きく不足すること。２場以外の大規模施設が必要としたうえで、ＢＴＣの活用は夏場の限られた期間において、関係者の宿泊施設などハード面の大きな増築だけでなく、獣医師や装蹄師、また人の医療体制といった運営に必要なスタッフの確保、現状は民間が行っている運営上の住み分けなどの理由から実現は極めて困難とした。また、中間点など新たな施設の建設については大規模投資が必要となり、ＢＴＣの活用以上に非現実的だとしている。 　一部議論のある外厩制度（育成牧場での調教からの出走を可能とする）については、競馬の公正確保、防疫、ファンへの情報発信の観点から、ＪＲＡの信頼維持に支障をきたすとした。