新時代に突入した地球 過去100年分の地層データにみる「人新世」の始まり…人が求めた豊かさの代償とは
環境汚染が深刻化する中、オゾン層が破壊されるメカニズムを解明しノーベル化学賞を受賞したパウル・クルッツェンは… ‟完新世はすでに終わった。我々は人新世の中にいる”とし、地球は人類によって激変させられ、「人新世」という新しい時代に突入していると提唱したのです。
別府湾の海底堆積物から検出された“放射性物質”
加 准教授の研究の舞台は、愛媛の西隣。温泉地で名を馳せる大分県別府市の海の玄関口、別府湾です。別府湾は海底付近の酸素が薄く、貝類などの生物が生息しにくい「貧酸素」の海域。海底に沈んだ泥がかき混ぜられにくいため、堆積物の変化を1年単位で特定できるのです。 2021年。加教授をはじめとする研究チームは、別府湾の水深70mにある海底堆積物を採取しました。
異なる濃淡の縞模様が幾重にも重なった別府湾の海底堆積物。この縞は年縞と呼ばれ木の年輪と同じように、一年ごとに海底に降り積もった泥や砂からなる薄い層です。 1916年から2021年まで過去105年分ある別府湾の海底地層から見えてきたのは、環境破壊の痕跡でした。 その一つが核実験によって放出されたプルトニウムやウランなどの放射性物質です。遠く離れた核実験場から大気を通じて降り積もった放射性物質が、1953年以降の別府湾の堆積物から検出されたのです。 加教授: 「これだけ人工放射性核種が増加した時代というのは地球が誕生して以来、はじめてのこと。これは明らかに人が地球環境を変えた証拠の一つになる」 核実験による放射性物質は別府湾だけでなく、南極の氷など世界中の様々な地層からも発見され、地球全体に環境汚染が及んでいたことがわかりました。 核実験が頻繁に行われた1960年代。日本は高度経済成長期を迎えます。
砂浜に打ちあげられたゴミの山…暮らしを便利にしてきたはずが
町のシンボル‟赤橋”がかかる愛媛県大洲市長浜町。 今岡ハル子さん(82)。高度経済成長期真っ只中の1962年に、ここ長浜に嫁ぎ今は亡き夫とともに、船の電気設備の工事などを行う小さな会社を営んでいました。