もはや“実家”な群馬のセレクトショップ 名物社長がつくる、異色コラボや信頼関係
店舗スタッフとの関係構築も抜かりない。自らも店頭に立ち、常に接客につくそうで、「背中を見せているからこそ、スタッフがついてきてくれると思うし、垣根なく話し合えていると思う。僕はもうお爺ちゃんの年齢なのにね(笑)」と分析する。アパレル業界では低賃金が問題視されることが多いが、エスティーカンパニーでは社員の給与面向上にも気を配る。Uターン・Iターン者向けの支援として、引越し費用のサポートをするなど、「アパレル店で勤務する誇りを育てたい」という環社長の思いが光る。
環社長がブランドやデザイナー、店舗スタッフと築いた信頼は、さらなる取引を呼び、余裕のある接客につながり、ひいては顧客のニーズを満たす。「うちは、遠方から何年も通い続けてくれるお客さんが多い」。上流から下流に水が流れるように、ここには“信頼”のトリクルダウンが生まれている。
記者が目撃
“異色のコラボ”が生まれる現場
群馬を訪れる前、先輩記者から「遠方からわざわざ行きたくなる店、それがエスティーカンパニー」と聞いていた。上述の信頼度合いも大きな要因だろうが、それだけを“わざわざ行きたい”の理由にするには、どこか心許ない。そう思っていると、「ポーター」の新製品お披露目を記念した、レセプションパーティーが始まった。
まず驚いたのは、ブランドのデザイナーやメディア、商業施設の責任者などの業界関係者だけでなく、エスティーカンパニーの常連客も同じくらい多く招待していた点だ。20年来の店のファンだという女性客や、仲良しのスタッフを訪ねて埼玉県からやってきたという男性客も。パーティーで見かけがちな、気まずそうに立ちすくむ参加者はおらず、社長やスタッフ、他のゲストらと垣根なく交流を図る姿が印象的だった。
それもそのはずで、環社長は「このカフェを使って、頻繁にイベントを開き、みんながフラットに会話できる機会を作っている」と話す。中でも“もじゃ君”という愛称でスタッフから呼ばれる20代の男性客は、お正月イベントで獅子舞に扮し、来店した子どもの頭を噛んで一年の健康を祈る役を行ったという。