【学校の断熱最前線】校舎の暑すぎ・寒すぎ問題、築50年の老朽化した校舎が断熱改修で「環境教育」の場に! 葛飾区で新展開
樹脂製サッシの内窓を施工して二重窓に。
パーテーションの裏に断熱材が施工されていると説明してくれた木村さん。
引き戸の窓は空気層のある中空ポリカーボネートに変更。
全熱交換型の換気システムも導入。
改修後、夏季に冷房をつけ、温度変化を計測したところ、断熱改修をしていない教室と比較して約1時間早く、5度以上の温度低下が確認できたといいます。また、冷房を切ってから2時間後には非断熱の教室とは約2度の温度差がありました。
学校の断熱改修を「環境教育」に
学校の断熱改修は、子どもたちの地球環境や身近な省エネに対する意識の啓発につながることから、環境教育にも活かされているようです。同校の教室の断熱化は、専門家の指導のもと、子どもたちと一緒に「断熱ワークショップ」という形で進められました。子どもたちは実際に断熱材に触れ、記念に思い思いの絵を描いたといいます。 「断熱改修自体に社会的意義や持続可能な地域社会の構築といった役割がありますが、せっかくなら子どもたちに省エネ意識を持ってもらいたいということでワークショップを開催しました。改修後も、興味を持ち続けてもらえると嬉しいですね」(山嵜さん)
「公共の建物の断熱改修は、解決していかなければならない課題の一つと認識しています。まずはやってみようということになり、試験施工の1例目ということもあって学校側にもご協力いただくことも多かったため、教育という形で協力させていただきたいと思い、子どもたちにも参加してもらいました」(木村さん)
夏の断熱改修後、教室を利用した子どもたちへの冬に行ったアンケート結果によれば「教室が暖かくなった」との回答は77%にもおよびました。また「授業に集中できるようになった」「省エネへの意識が変わった」と答えた子どもたちも6割を超えており、教育環境の向上とともに環境教育の効果が見られます。(いずれも「非常にそう思う」「そう思う」の合計)
学校断熱を進めていくにはタイパ・コスパも必要
教室を囲うように断熱材を施工し、熱交換換気システムまで導入するとなると、やはり費用も時間もかかってしまいます。清和小学校の教室1室の断熱化には、1カ月以上を要したといいます。 「今後、広く、多くの施設に施工していくことを考えれば、ひとつの教室に1カ月以上かかるとなると効率性に課題があります。もう少しグレードダウンして、たとえば熱の出入りの6割を占める窓を重点的に施工するなど、断熱方法を検討しなければなりません。次に教室1室の断熱改修の試験施工を行った青葉中学校の改修は、効果的と考えられる窓と最上階の天井部分を断熱化しています」(木村さん)
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