【学校の断熱最前線】校舎の暑すぎ・寒すぎ問題、築50年の老朽化した校舎が断熱改修で「環境教育」の場に! 葛飾区で新展開
区立青葉中学校の断熱改修は、2024年1月に実施されました。清和小学校とは異なり、断熱改修内容は窓の二重サッシ化と最上階の天井の断熱材施工のみです。改修箇所を絞った分、窓の性能を高めるため、内窓には断熱性能の高いLow-E複層ガラスを採用。換気システムは、熱交換型ではないものの、二酸化炭素濃度が高まると自動で作動するものを導入したといいます。
内窓は断熱性の高いLow-E複層ガラスを採用。
「冬休み期間を利用して、2週間ほどで施工できました。今年の冬に改修しましたので、夏を迎えるのはこれから。現在は、東京大学の前先生のご協力を賜り、天井や空調に機器を取り付け、温度や消費電力の計測を行っている最中という状況です」(山嵜さん) 今後は、清和小学校および青葉中学校の計測結果を参考にして、効率的かつ効果的に断熱化できる方法を模索していくとのことです。
小学校の新校舎でZEB Readyを達成
葛飾区では、2019年12月に東京都が「ゼロエミッション東京戦略」を策定したことを受け、20年2月に東京都の市区町村で初めて、2050年までに温室効果ガスの排出量実質ゼロを目指す「ゼロエミッションかつしか」を宣言。2022年3月には地球温暖化対策実行計画を改定し、今後建て替え等を行う公共施設については、ZEB Ready以上の認証を目指し、ZEBの標準化を進め、認証が実現困難な施設は可能な限り省エネ性能を高めるとしています。 2027年に新校舎の完成を予定している区立宝木塚小学校は、新校舎の設計において建物が使用するエネルギーを基準値から52%削減し、ZEB Readyを達成しました。公共施設の断熱化に積極的に取り組む理由について、木村さんは次のように話します。 「葛飾区は環境問題に非常に関心を寄せており、東京都で最も早く『ゼロエミッションかつしか』を宣言しました。ゼロエミッション達成に向けては、区民の皆様や事業者の皆様の温室効果ガス削減の取組を一層加速させていかなければならないと思っています。そのために、区も率先して取り組んで行くという意識を持っています」(木村さん) 取材を通して、職員の方々の知識の深さにも驚きました。断熱改修試験施工の設計は基本的に区で行っており、使用する建材については、効果はもちろんコストや汎用性などにも鑑みて選定しているといいます。職員の知識を深めるため、定期的に勉強会を開催し、有識者を招いて講演してもらうこともあるのだとか。 学校断熱の取り組みはまだ始まったばかりですが、杉並区でも23年に断熱改修に着手。数校の普通教室の天井を断熱化し、今年の夏に効果検証を行ったうえで今後の方針を決めていく予定だといいます。学校は、子どもたちが長い時間を過ごす場所。健やかに、集中して学ぶことのできる環境づくりに向けた動きが、徐々に広まりつつあります。 ●取材協力 葛飾区役所 営繕課技術管理係
亀梨奈美
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