【感染症ニュース】大阪府・泉佐野保健所管内で麻しん発生の報告 患者の行動履歴を記載 同じ施設・公共交通機関利用者は注意
大阪府が2024年11月14日に発表した「麻しん(はしか)に関する注意情報」によると、大阪府の泉佐野保健所管内の医療機関から、麻しんの発生届が提出されました。麻しんと確認されたのは、30代の男性で、11月7日に症状が出た後に、公共交通機関を使い、関西国際空港へ向かい、ベトナムへの航空便を利用。その後、現地滞在後に、11月12日に帰国しています。2024年に39例の麻しんが国内で確認されており、大阪府での報告は、これで9例目となります。 【2024年】11月に注意してほしい感染症!インフルエンザの動向に要注視マイコプラズマ肺炎は過去最多を更新医師「関東は伝染性紅斑に注意」 ◆患者の概要 30歳代・男性 ワクチン歴:不明 渡航歴:あり(※発症後の渡航) 主な症状:発熱、発疹、鼻汁、結膜充血、下痢、倦怠感(入院中、現在快方傾向) 発生届出年月日:2024年11月12日(検査確定:2024年11月12日) 発症日:2024年11月7日 ◆行動履歴(感染性のある期間に患者が利用・不特定多数の方と接触した可能性のある日時及び施設等) 11月6日(水)7時50分から8時00分まで 近鉄電車 大阪難波駅構内 11月6日(水) 8時00分から9時00分まで 阪神電鉄 大阪難波駅から新開地駅(乗り入れ路線含む) 11月6日(水)14時00分から15時00分まで 阪神電鉄 新開地駅から大阪難波駅(乗り入れ路線含む) 11月6日(水)15時00分から15時30分まで Osaka Metro御堂筋線なんば駅からOsaka Metro中央線コスモスクエア駅(途中、本町駅で乗り換え) 11月6日(水)16時00分から16時10分まで 大阪出入国在留管理局(大阪市住之江区) 11月6日(水)16時10分から16時40分まで Osaka Metro中央線コスモスクエア駅からOsaka Metro堺筋線恵美須町駅(途中、堺筋本町駅で乗り換え) 11月8日(金)12時00分から13時00分まで 南海電鉄 新今宮駅から関西空港駅 11月8日(金)13時00分から15時05分まで 関西国際空港 第1ターミナル(「サクララウンジ」を利用) 11月8日(金)日本時間15時23分から現地時間18時03分まで ベトナム航空 VN335便 関西国際空港からノイバイ国際空港(ハノイ) 11月12日(火)現地時間00時19分から日本時間6時52分まで ベトナム航空 VN326便 タンソンニャット国際空港(ホーチミン)から関西国際空港 11月12日(火)7時00分から11時00分まで関西国際空港 第1ターミナル 同日、泉佐野管内の医療機関から発生届が提出 ◆麻しんとは? 麻しんは、麻しんウイルスによって引き起こされる急性の全身感染症です。感染すると約10日後に発熱やせき、鼻水と言った風邪のような症状が現れます。2〜3日熱が続いたあと、39℃以上の高熱と発しんが出現します。肺炎や中耳炎を合併しやすく、患者1000人に1人の割合で脳炎を発症すると言われています。死亡する割合も、先進国であっても1000人に1人と言われています。麻しんウイルスの感染経路は、空気感染、飛沫感染、接触感染で、ヒトからヒトへ感染が伝播し、その感染力は非常に強いと言われています。免疫を持っていない人が感染すると、ほぼ100%が発症すると言われています。 ◆大阪府は… 大阪府は、「麻しんの潜伏期間は、約10日から12日(最大21日間)で、麻しん患者と接触した場合には、接触後3週間(21日間)注意が必要です。感染の可能性がある期間に、該当する施設などを利用した方で、12月3日(火)までに発熱・発疹等、麻しんを疑う症状が現れた場合は、事前に医療機関に連絡の上、マスクを着用し、公共交通機関の利用は避けていただき、速やかに受診」するよう呼び掛けています。 また、医療機関に対しては、府内での発生事例を踏まえ「発熱・発疹症状のある患者が受診した際には、予防接種履歴や海外渡航歴の確認などを行い、麻しんと診断された場合には、速やかに保健所に発生届を提出してほしい」としています。 ◆感染症に詳しい医師は… 感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室長の安井良則医師は、「麻しんの流行は、春から夏にかけて多いとされています。この時期の患者発生は、正直、気がかりです。秋口での発生がある場合は、年明けころまで、注意が必要です。麻しんは感染力が強いですが、免疫があれば防ぐことができます。今回の大阪府の例では麻しんの予防接種歴がなかったということですが、ワクチン接種以外に防ぐ手立てはありません」と話しています。 ◆ワクチン接種が最も有効な予防法 麻しんはワクチンで予防ができる感染症です。現在は定期接種となっており、1歳になった時と、小学校入学前の1年間の2回接種します(多くはMR=麻しん風しん混合ワクチンが接種されます)。ワクチンを接種すると1回で95%程度の人が麻しんウイルスに対する免疫を獲得でき、2回接種すれば、1回では免疫がつかなかった多くの方に免疫をつけることができるといわれています。 ◆ワクチン接種率が低下している しかし、近年麻しんを予防するワクチンの接種率が低下しています。2022年度の統計では、全国の麻しんワクチンの接種率は第1期が95.4%、第2期が92.4%です。 安井医師「麻しんに対する集団免疫の獲得には2回のワクチン接種率が95%以上であることが必要とされています。このままワクチンの接種率が低い状態が続くと、再び麻しんの流行が起こる可能性も否定できません。感染症はいつ感染するかわかりませんので、お子さんのワクチン接種は忘れずに受けていただきたいと思います」 ◆定期接種の期間を逃してしまったら… 麻しんワクチン(MRワクチン)は決められた期間であれば公費で無料で受けることができます。その期間が過ぎてしまった場合でも自費になりますが接種することはできるので、かかりつけ医などにご相談ください。また、自治体によっては定期接種の機会を逃した方への接種費用の助成を行なっているので、お住まいの市区町村などにお問い合わせください。 引用 厚生労働省:麻しんについて、麻しん風しん予防接種の実施状況 大阪府報道発表資料:麻しん(はしか)患者の発生について(2024年11月14日) 取材 大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室長 安井良則氏