防衛予算はどう変わる? 狙われるイージス艦建造費「3920億円」の行方 削減の可能性は?
イージス・システム艦、費用増加の危機
防衛増税が難航すると、予算にはどのような影響が出るだろうか。各党の公約を確認すると、いくつかの装備について明確な反対の意見が表明されている。そのひとつが、いわゆるイージス・アショアの代替艦、イージス・システム搭載艦である。 イージス・システム搭載艦は、もともと陸上配備を予定していたイージス・アショアを洋上配備に切り替えた結果、建造が決定されたものだ。日本は北朝鮮の弾道ミサイル開発が進むなかで、弾道ミサイル防衛に予算を投じてきた。現行の防衛システムは、イージス艦や陸上のパトリオットミサイルを使って弾道ミサイルに対応するものだ。しかし、イージス艦は限られた数しかなく、弾道ミサイル以外にも様々な任務があるため、その負担を軽減するために新たな装備が必要とされていた。この背景から、イージス・アショアが導入されることになった。 しかし、イージス・アショアは洋上配備に切り替えられることになり、新たに艦艇の建造が決まった。2020年、河野太郎防衛大臣が当時の計画を停止し、陸上配備は中止された。その後、洋上配備が進められることになったが、装備の高額な費用や、海上自衛隊の負担軽減にならない点について批判が上がっている。 国民民主党は、イージス・アショアの再検討を掲げており、「国民民主党の政策2024」では「現在進めている「イージスシステム搭載艦」の有効性を検証するとともに、中止が決定された「イージスアショア」の配備についても再検討します」としている。 イージス・システム搭載艦については、すでに1番艦の建造が始まっている。2020年には新たなミサイル防衛システムの整備が決定され、2隻のイージス・システム搭載艦の建造が決定された。2023年度予算には、その関連予算も盛り込まれ、1番艦は2027年に竣工する予定だ。 しかし、イージス・システム搭載艦の建造は順調に進んでいるものの、衆議院議員選挙を経て、予算案に対する見通しが不安定になっている。2023年12月に防衛省は、イージス・システム搭載艦1隻の取得経費が約3920億円に上るとの試算を発表した。この試算は2019年度予算からの取得費用をもとにしている。また、財務省は、イージス・システム搭載艦の運用経費が現在の「まや型」よりも高くなると予測しており、今後のコスト増加に警鐘を鳴らしている。 イージス・システム搭載艦の建造はすでに始まっているが、今後の状況によっては見直しが行われる可能性もあるだろう。
加藤博章(国際政治学者)