経済学者が指摘する「中国EVが詰んでいる理由」…大変だ!アメリカが警鐘「チャイナに半導体製造装置を売ったらダメだ!」
経済学者の上念司氏は、投資を成功させるためには「経済リテラシーを磨くとともに、国際政治並びに地政学の知見が大いに役立つ」と話す。では、いま世界中で起こっている出来事を私たちはどのように捉えるべきなのか。ロシアによるウクライナ侵攻の影響やアメリカの中国への圧力などへの見方について、上念氏が解説する。 ※本記事は上念司著『経済学で読み解く正しい投資、アブない投資』(扶桑社)から抜粋、再構成したものです(全4本中の2本目)。
世界中の出来事がインフレを引き寄せる
経済理論と地政学を踏まえて、いま世界で起こっていることを解説しましょう。結論から言うと、いま世界で起こっていることはインフレ期待を強めるイベントばかりです。たとえば、2022年2月にロシアがウクライナに侵攻しました。その結果、エネルギー価格は高騰し、原油(WTI)は一時1バレル150ドル台という史上空前の高値をつけました。 また、ロシアやウクライナからの鉱物資源の輸出にも当然影響が出ます。たとえば、ウクライナは半導体製造に必要なネオン(Ne)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)などの「希ガス」を供給しています。特にネオンの供給量は世界の約7割を占めていました。このため、2022年以降、これら希ガス類の価格が高騰しました。 半導体製造工程などで使用される希ガスのクリプトン(Kr)、キセノン(Xe)の需給が慢性的にタイトな状況だ。同分野向けを中心に需要が伸びる一方、供給量が追い付かず、ロシアによるウクライナ侵攻により、世界的な需給のひっ迫に拍車がかかった。 日本国内でも生産量に余力がない状況で、 7月には大陽日酸が2010年以来の 能力増強を発表したが、製鉄向けなど大規模な酸素需要量の確保がこうした設備投資の前提となるため、根本的な需給改善に向けた動向は不透明といえる。 引用:希ガス 世界でひっ迫、半導体向け 伸長も供給は不安定 『化学工業報』 (2022年9月9日) 国際商品市況は2023年にはある程度落ち着きましたが、2023年10月にイスラム原理主義勢力ハマスがイスラエルに越境テロ攻撃を行ったことで再び原油価格は上昇に転じました。ハマスのテロ攻撃に対するイスラエルの報復攻撃は自衛権の範囲を逸脱する過剰なものであり、国際社会ではジェノサイド(虐殺)だと非難されています。 さらに、パレスチナにアラブの大義を見いだす原理主義勢力がイスラエルに対する攻撃姿勢を強めました。なかでも、イエメンを事実上、支配するフーシ派は紅海において船舶攻撃を開始。そのせいで、多くのコンテナ船やタンカーが紅海を通れなくなり、アフリカの喜望峰に迂回せざるを得ない状況となっています。物流費の高騰を予感させます。