少年兵から大人気モデルへ……異色の経歴を持つ青年がファッションデザイナーになった理由は?
初のファッションショー
全額自費でまかなった初のファッションショーのタイトルは"War Zone(戦争地帯)"。彼が決して語らない残虐の記憶がそこにこだまする。スーダンの内戦は2020年以降38万人以上の命を奪ったとAFP通信は報じている。その最中に少年兵士だった彼の過去については、ほとんど知られていない。この件について尋ねられたマムオル・マジェンは詳細を語らず、「辛い経験」だったとだけ言う。彼はそうした記憶を言葉にすることなしに、曲線と素材を与え、服とした。パリのコロネル・ファビアン広場のエスパス・ニーマイヤーでおこなわれたショーは残虐な寓意に満ちていた。カモフラージュ柄は少年の頃、同胞を襲った敵の記憶を象徴している。あるモデルが腕に抱える黒い人形は、彼や兄弟姉妹を象徴している。母親は子どもたちを抱えて戦火から守ってくれた。「エレガントな感じに仕上げることもできるけれど、自分が育ったのはそんな環境だった」
フィナーレで挨拶に出てきたマムオル・マジェンは白い毛皮を纏っていた。彼の民族であるディンカ族が眠る時に敷物にする動物の毛皮にちなんでいる。彼はその場に座り込んだ。このショーは父が亡くなって5日後におこなわれた。暴力を捨て、スポットライトを浴びる暮らしをするようになった今、自らのルーツへ敬意を表したマムオル・マジェンは、こうして不屈の精神の象徴となった。
text : Sarah Renard (madame.lefigaro.fr)