<春を駆ける>高知 センバツへの軌跡/下 支え合い力に、四国王者 /高知
昨秋の四国地区大会県予選の初戦・土佐戦で辛勝を経験し、チームの掲げる「下克上」実現への誓いを新たにした高知ナインら。浜口佳久監督は土佐戦での接戦について「負け試合。全てうまくいかなかった」と振り返りながらも「(接戦をものにしたことで)自分たちの自信を取り戻した」と見ている。 高知ではこれまで、ウエートトレーニングは体幹と下半身の強化をメインにしていた。だが、新チームは打てる選手が多かったため、肘や肩への負担からボールを投げられなくなることを覚悟した上で上半身の強化にも力を入れてきたという。それが、土佐戦での最終回の粘り勝ちにつながった。 続く宿毛工、高知商戦では、いずれも大差をつけてコールド勝ち。決勝の明徳義塾戦では、公式戦で初めてマウンドに立った川竹巧真選手(2年)が五回途中まで被安打2と好投。延長十一回までの激戦の末に0―1で敗れたものの、安打数では明徳を上回り、どちらが勝ってもおかしくない好試合を繰り広げた。 実は、秋の大会での躍進の背景には引退した3年生の尽力もあった。新チーム結成時にはほぼ毎日のように3年生がグラウンドを訪れ、守備のシステム作りに協力。先輩投手陣は、大会で対戦する相手投手の投球速度や癖を模倣しながら、バッティング練習に付き合ってくれたという。 そして、高知2位として出場した四国大会。香川1位の英明と対戦した準々決勝では強打を封じられ我慢の展開が続いたが、川竹選手と山下圭太選手(2年)の継投策が決まり、チームは2―1で接戦をものにした。試合を通じて被安打は4。「ピンチばかりだったが、(ピンチを)しのいだ後は良い流れで攻撃できていた。今まではミスの後は焦っていたが、チーム全体が良い雰囲気だった」。扇の要から選手たちを見ていた捕手の西野啓也選手(2年)はそう振り返る。 センバツを見据えるならば絶対に勝っておきたかった準決勝の徳島商(徳島2位)戦では、計15安打と打線が爆発。五回には、高橋友選手(2年)が甘く入ったスライダーを捉え、本塁打を放った。高知が「打」のチームであることを見せつけた象徴的な瞬間だった。結果は11―4でコールド勝ち。試合後、感極まった浜口監督の目から涙が流れていたのを、選手らは見逃さなかった。 ◇ 決勝戦では徳島1位の鳴門を7―3で降し、9年ぶりの四国大会優勝を果たして、春の吉報をたぐり寄せた。破壊力のある打線とチームワークを生かした守備。圧倒的なエースは不在ながらも、各選手の個性を生かした戦略と団結力を最大の武器に、高知はさらなる夢に挑む。【小宅洋介】