学生の可能性に国境なし ペルー出身アントニさん(浜松)外国ルーツの若者の就学支援尽力 母国から「国民名誉賞」
ペルー出身の事業家アルバレズ・アントニさん(28)=浜松市中央区=による、外国にルーツを持つ若者向けの就学支援活動が本格化している。国際協力機構(JICA)中部センターや教育機関と連携して進学相談会を開き、情報発信する活動は各方面から評価され、10月にペルー政府から「国民名誉賞」の表彰を受けた。アントニさんは「学生が持つ可能性を広げられるよう、努力していきたい」と話す。 「進学ローン申請の方法は」「定時制高校で必要な日本語レベルを教えて」。アントニさんは9月、浜松市中央区でオンラインの相談会を開いた。県内外国人らでつくる団体「シズラティーノス」の「みらいインベスト事業」と銘打って今年春に始動した進学相談は、国籍問わず外国人社会に広まりつつある。 アントニさんは12歳の時、日本語を全く話せない状態で両親と来日した。常葉大進学後、授業や居酒屋のアルバイトを通じて語学力を向上させた。卒業後は求職者を支援する施設「しずおかジョブステーション」の相談員として、さまざまな国籍、年代の人々の悩みに向き合ってきた。 求職者から「学生時代に資格を取っておけばよかった」との嘆きや「仕事に関して給料以外に興味がわかない」といった意見を聞く中で10代の進路選択、キャリア教育の重要性を痛感した。高校や専門学校、外国籍でも使いやすい教育ローンを扱う日本政策金融公庫などに呼びかけて今年、進路セミナーを2回開催。多様な国籍の若者や保護者が計150人以上参加した。開催後に継続して相談する体制も整えている。 現在はしずおかジョブステーションを運営する東海道シグマ(静岡市葵区)契約社員、通訳や保険業などの個人事業、就学支援活動と複数の仕事を掛け持ちする「パラレルキャリア」を実践する。今夏からは、新たにペルー料理店「ルスティカ」(浜松市中央区)の経営も始めた。 すべてに共通するのは「多くの人が夢や目標を実現するための機会を増やしたい」という思い。アントニさんは「国籍の区別なく社会参画が進み、より良い環境になるように活動を広げていきたい」と語る。
静岡新聞社