雪深い北信越のセンバツ出場校 徳島・阿南市が支援 元球児も応援
いよいよ開幕する第95回記念選抜高校野球大会。18日の第2試合には北陸(福井)が登場する。雪深い北信越のセンバツ出場校を陰で支えているのが温暖な徳島県阿南市だ。阿南市には、2007年に県営の野球場が完成したのをきっかけに生まれた「野球のまち推進課」があり、野球による地域おこしに取り組んでいる。そこでは元センバツ球児も奮闘している。 【開会式リハーサル 行進の練習をする選手たち】 北信越勢と阿南市との交流のきっかけは、同課が10年、新潟県高野連から「雪のためにセンバツで勝てない」と相談を受けたこと。初代課長の田上重之さんは「球場を開けて待っている」と答えたという。翌11年3月、センバツに出場する佐渡(新潟)がやってきた。以来、延べ16校がセンバツ直前の合宿を阿南市で行っている。 徳島の高校球児にもメリットがある。県高野連は「強豪校と試合ができ、春の県大会の前の地元選手にとって大きな財産」と喜ぶ。 今年3月上旬、阿南市に北陸の選手らの姿があった。雪に覆われたグラウンドでは走り込みはできても、打撃や守備、実戦の練習はできない。林孝臣監督(40)は「やっと解けたという時にテスト期間に入ってしまった」。阿南市では午前9時から野球漬けの日々を送れたといい「野球に集中できる。ありがたい」。エースの友広陸投手(3年)も「甲子園と同様の天然芝の球場で実戦ができた。お肉など食事もおいしかった」と喜ぶ。 この合宿中、北陸をサポートしたのは南陽工(山口)のOB、山崎大輔さん(24)。2年前に野球のまち推進課の一員に加わった。甲子園には強い思い入れがある。小学生の時、父が監督を務めてセンバツに出た南陽工の試合を観戦し、大歓声に身震いした。同校に進んで主将を務め、16年センバツに出場。初戦に快勝したが、次は相手の打球の速さや体の大きさにひるんでエラーをした。0―16で敗退。悪夢のような記憶を消し去ろうとする一方、指導者になって聖地に立つ夢を抱くようになった。 そこで阿南市に移住し、東亜大の監督として明治神宮大会を3回制覇し、現在は野球のまち推進課のアドバイザーを務める中野泰造さんの下でいわば修業中だ。最近、ようやくセンバツでの大敗を振り返れるようになった。「ミスに向き合って、この先につなげることが自分のすべきこと」 高知との初戦に臨む北陸の選手たちに、山崎さんは「勝負に挑む以上、楽しんでとは言えない。どんな相手にもひるまず思い切ってやってほしい」とエールを送っている。【国本ようこ、戸田紗友莉】