倉田真由美さん、事情を知らぬ人に「結婚されているんですか?」と聞かれて返答に窮した日に想ったこと
漫画家の倉田真由美さんは、夫の叶井俊太郎さん(享年56)と結婚して15年あまり。協力して家事や子育てをしてきた中で、一度も喧嘩をしたことがないという。夫を失った今改めて思う「夫婦の形」とは。 【画像】叶井俊太父さん、旅先で娘をのせて自転車を駆る姿。「この人のおかげで私は何一つ諦めずに生きてこれました」
執筆・イラスト/倉田真由美さん
漫画家。2児の母。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。一橋大学卒業後『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセイを手がける。お笑い芸人マッハスピード豪速球のさかまきさん原作の介護がテーマの漫画『お尻ふきます!!』(KADOKAWA)ほか著書多数。 夫の叶井俊太郎さんとのエピソードを描いたコミック『夫のすい臓がんが判明するまで: すい臓がんになった夫との暮らし Kindle版』 『夫の日常 食べ物編【1】: すい臓がんになった夫との暮らし』は現在Amazonで無料で公開中。
ある飲み会で言葉に詰まったこと
先日とある飲み会で、初めて会った女性と会話している時に、「倉田さんは、ご結婚されてるんですか」と聞かれました。 不意打ちのその質問に、ぐっと喉が詰まり、しばしの間答えることができませんでした。その様子を彼女の隣にいた女性が見ていたようで、「倉田さん、最近旦那さん亡くされたのよ」と私に代わって説明してくれました。 質問した女性は「あ、ごめんなさい。知らなくて」と恐縮されていましたが、謝るようなことではないので私からも事情を話そうとしましたが、動揺してしまって「いえいえ」とか「実は」とか、要領を得ない単語を並べたてるだけに終わりました。 外出先で「結婚しているのか」と聞かれたら、夫が生きている時なら「はい。夫は今、自宅で子どもの面倒見てくれています」と答えたと思います。いつもそうだったから。 私たち夫婦は、どちらかに予定がある時はもう片方が留守番して子どもの面倒をみる、というスタイルでずっとやってきました。 だから、私も夫も飲みに行ったり友だちと旅行したりなど、したいことを我慢をしたことがほとんどありません。大体月に2、3回程度なのでお互いの予定が重なることはあまりなかったですが、それでも重なった時は重要度の高い方、行きたい気持ちが強いほう優先で、臨機応変に決めていました。普段二人とも我慢をしていないので、ストレスが溜まっていないせいか揉めることもありませんでした。 これは、私と夫が喧嘩をしなくてすんだ大きな要因の一つです。お互いが、したいことをする。我慢しない。そのためにバランスよく子育てを協力しあっていました。
夜、夫のいない家で思うこと
実にシンプルなことですが、案外これがうまくいっていない夫婦は多いようです。どちらか片方にばかり負荷がかかっていたり、「父親だから、母親だから、我慢するのは当たり前」と思いこんでいたり。一度しかない自分の人生、わざわざつまらなくする理由はどこにもないのに。 私は恵まれていました。夜、夫のいない家に帰るたびにそれを噛み締めます。