「美しい姿を永遠にとどめたい」作家・稲葉なおとが捉えた、名建築と社交ダンスが織りなす「美の世界」
艶やかな衣装に身を包み、絢爛豪華な建築を背景に軽やかに踊るダンサーたち。その舞台は日本武道館や、グランドプリンスホテル新高輪の「飛天」、駒沢オリンピック公園の総合運動場体育館といった名建築だ。 【写真】愛子さまが静養中に身につけていた「チェック柄のシャツ」の「驚きの値段」 元建築家で、現在は紀行作家や写真家として活躍する稲葉なおと氏が名建築を舞台にした競技ダンス(社交ダンス)の撮影を始めたのは約12年前のこと。 前編記事『「“500分の1秒”の世界を切り取る」絢爛たる名建築とダンサーのめくるめく競演…作家・稲葉なおとが語る「ダンスと建築の美」』に続き、稲葉さんが競技ダンスの世界に魅せられた理由について語ってもらった。 写真(右) 五月女光政/五月女叡佳 グランドプリンスホテル新高輪「飛天」
ダンサーたちの成長にも魅了された
すべての選手に目を光らせる稲葉さんの撮影対象は、決して優勝候補と呼ばれるような有名ダンサーたちばかりではない。プロかアマチュアかどうかもまた関係なく、自身の琴線に触れる選手たちをこれまでフレームに収め続けてきた。 「ダンサーたちの成長や変化にも魅力を感じるようになりました。成長が見えるなんていうと、ちょっと偉そうですけど(笑) たとえば、現在、ダンス界の第一線で活躍する藤井創太選手や八谷和樹選手は14、5年前、彼らがまだ小学生、中学生の時からそのダンスを見ていますし、野村直人選手も都立大の競技ダンス部の頃から追いかけてきました。八谷選手、藤井選手は小中学生の頃から群を抜いていましたし、その後のふたりの成長ぶりや、2人がそろって参加する大会での抜きつ抜かれつの競い合いは、私も含め観客を魅了してきました」
競技ダンスの世界は二人で織り成すもの
一方で、切磋琢磨を続けるうち、ときにはペアの関係性が壊れてしまうこともある。 「テニスやフィギュアスケート、卓球などにもペア競技はありますが、競技ダンスはペアのみで競い合うスポーツです。ですので、あるカップルが、さまざまな事情で別れるケースも少なくありません。 でもその後、男性は新たなパートナーを見つけ、女性もまた別のパートナーと組んで、それぞれが見事な成長を見せてくれたりするケースを目撃すると、ダンスは本当に、男女の心と技がぴたりとかみ合うことがいかに重要であるかを再確認しますし、そうしたパートナーと巡り合えるかどうかは、奇跡に近いものなのだと思いますね。互いの心技がピタッとかみ合ったときにこそ、より高みに上れるわけです」