日本の若者の「建築業界離れ」がかなり深刻に…「労働時間は長く賃金も低い」厳しい実態
この国の人口はどこまで減っていくのだろうか。今年1年間の出生数が70万人割れになるかもしれず、大きな話題となっている。 【写真】日本人は「絶滅」するのか…2030年に百貨店や銀行が消える「未来」 そんな衝撃的な現実を前にしてもなお、多くの人が「人口減少日本で何が起こるのか」を本当の意味では理解していない。 ベストセラー『未来の年表 業界大変化』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。 ※本記事は河合雅司『未来の年表 業界大変化』から抜粋・編集したものです。
国交省は生産性向上を解決策とするが……
むしろ、建設業にとっての人口減少の影響は、就業者の減少という形で色濃く表れる。かねてより人集めに苦労してきた業界だ。少子化に伴う若い世代の減少スピードは速く、このまま“不人気職種”から脱することができなければ、採用難はさらにひどくなる。人手不足で受注したくてもできないということになれば、人口減少による国内マーケットの縮小を心配しているどころではなくなる。 国交省は建設業の人手不足に関する将来推計をしているが、建設業就業者はコロナ禍前の2018年度時点で、すでに前年度の331万人より約2万人少なくなっている。こうした状況に加えて、建設業も2024年度からの改正労働基準法の適用に向けて時間外労働の上限規制にも考慮しなければならない。 建築投資が2017年度と同水準と仮定した場合、製造業を下回る労働時間(5年で5%減少)とするためには新規に16万人増やす必要があるというのだ。さらに、推計は外国人労働者について3万人ほど少なくなると試算している。合計すれば、2023年度までに約21万人を確保しなければならない。 しかしながら、新規学卒者だけでは賄いきれない。総務省の人口推計によれば2021年10月1日現在の20歳男性人口は59万9000人だ。女性を含めても116万9000人である。各業種による“若者争奪戦”は激化の一途だというのに、建設業だけで20歳男性人口の3分の1を確保するというのは、さすがに無理がある。 そこで、国交省は解決策も示している。まずは、建設現場の生産性を年間1%向上させることで16万人分の人手を確保したのと同じ効果が得られるという。さらに新規学卒者を1万5000人採用し、それでも足りない分については、外国人労働者を約3万5000人受け入れるという案だ。生産性の向上には、点検の効率化、データの整備・利活用、修繕における新技術や新材料の活用が必要だと付け加えている。