ストームチェイサーとは 青木豊さんに聞く
夏場は、竜巻やスーパーセル、ゲリラ豪雨など、さまざまな気象現象が発生しやすい。そういった現象は時に大きな被害を及ぼすこともあるが、一方で幻想的な表情をみせてくれる。竜巻をはじめとした気象現象の追跡を行い撮影する専門家のことをストームチェイサーと呼ぶ。日本における、その第一人者が青木豊さん(46)だ。8月22日には、巨大な竜巻と“戦う”ストームチェイサーを描いた映画『イン・トゥ・ザ・ストーム』が公開され、話題となっているが、そのストームチェイサーの魅力について、青木さんに話を聞いた。 【特別映像】ストームチェイサーを描いた映画『イントゥ・ザ・ストーム』
ストームチェイサーの生活は、常に気象情報との“にらみ合い”になる。青木さんの1日は、早朝4時半に起床。9時までアルバイトをして帰宅。その後、ネットで気象データをチェックし雨雲が確認できれば、カメラを片手に撮影に出かける。活動時期は、主に4月から9月。自宅のある北関東、茨城県と栃木県の県境を中心に撮影を行っている。 偏西風の蛇行によって、近年、日本で発生数する竜巻の数は増加傾向にあるいう。それでも、国内で発生する回数は20個前後でその半数は、海上での発生となる。青木さんが待ち構えている北関東は、多く発生するエリアではあるものの、それでも青木さん自身、竜巻に遭遇できたのは過去1度しかない。「僕は8年間、こういう撮影をしていて、1度だけ遭遇できたけど、運が良かっただけ。10年に1度、遭遇できればいいほうで、狙って遭遇できるものじゃない」と説明する。 スクープ写真を撮影するのは、土地勘も必要になり、迅速に移動することが求められる。「まず道を知っていることが重要で、長距離移動もできないですね。渋滞にハマってしまうと撮影できなくなる。最大でも30キロの移動距離くらい。事前に予想して動かないとうまくいかない」と、確認してから行動するのではなく、常に先回りを心がけている。 映画『イントゥ・ザ・ストーム』で描かれているストームチェイサーは、一攫千金を狙う“強者”だが、現実では、一攫千金とはいかないという。「撮影した写真がお金に変わるとしても、数千円から数万円程度。“賞金稼ぎ”というわけにはいかないですね。僕自身も一発当てよう、という気持ちはなくて、(撮影した写真が)研究材料になってくれればうれしいとは思います」と、日本においては、“稼げる”職業ではない。「生活費はバイトで稼いで、撮影した写真を提供して得た収入で機材を買ったりします。好きじゃないとやってられない仕事ですね」。