「経営者保証」 75%の企業が「外したい」 保証料率の上昇、金融機関との関係悪化を懸念する声も
Q2.現在、貴社は金融機関からの資金調達に際し、経営者保証を提供していますか?(択一回答)
◇48.5%が個人保証を提供 金融機関から資金調達している企業のうち、3,761社から回答を得た。 提供「している」は48.5%(1,825社)、「していない」は51.4%(1,936社)でほぼ拮抗した。 規模別では、中小企業では「提供している」は51.4%(3,462社中、1,782社)で、半数を超えた。 「提供している」と回答した企業が多かった業種(全企業、中分類、回答母数10以上)は、最多が「不動産取引業」の77.2%(44社中、34社)だった。一方で、「提供していない」と回答した企業の業種では、「協同組合」が75.0%(20社中、15社)で最も多かった。
Q3.Q2で「提供している」と回答された方に伺います。3月15日から経営者保証なしで融資が受けられる信用保証制度の受付が開始されました。この制度の貴社の利用状況は以下のどれですか?(択一回答)
◇「制度が始まったことを知らない」が53.2% Q2で経営者保証を提供「している」と回答した1,700社から回答を得た。最多は「制度が始まったことを知らない」の53.2%(905社)にのぼった。「すでに利用した(申し込んだ)」は7.0%(120社)だった。
Q4.Q3で「制度が始まったことは知っているが利用予定はない」と回答された方に伺います。利用しない理由は何ですか?(複数回答)
◇「保証料率が上乗せされる」が27.5% 最も多かったのは、「保証料率が上乗せされるため」の27.5%(551社中、152社)。次いで、「債務超過でない、2期連続で償却前経常利益が赤字ではないとの利用要件を満たさない」が22.5%(124社)、「経営者保証を外すと金融機関との関係が悪化すると感じるため」の21.4%(118社)と続く。 「その他」では、「創業草創期のため、条件をクリアー出来ない」(資本金1億円未満、建設業)や「利用要件を満たしているが保証を外す案内がない」(資本金1億円未満、飲食業)などの回答があった。制度の詳細部分への理解促進に向けた取り組みや、金融機関など関係先のアプローチをより一層進める必要がありそうだ。 ◇ ◇ ◇ 今回のアンケート調査で、75%を超える企業が「経営者保証を外したい」との意向があることがわかった。2024年3月に創設された「事業者選択型経営者保証非提供制度」の意義は大きい。ただ、保証料率の上乗せは「ゼロ」を求める声が多い。2027年3月までの時限措置として、上乗せされる保証料率の一部を国が補助する仕組みが整備されている。それだけに制度詳細も含めて、周知活動がより重要になっている。 ただ、経営者保証を外す場合、なぜ信用保証料が上昇するのか、などには忌憚のない議論も必要だ。金融関係者のなかには、メインバンク制の衰退とともに「社長の首に鈴を付けにくくなった」、「デットガバナンスが以前より利きにくくなった」など、企業と金融機関の距離感を憂う声もある。コロナ禍以降、大規模な粉飾事件も相次いでいる。企業のガバナンス浸透や透明性など「経営者保証ガイドライン」が定める3要素の実効性を確保できないまま、脱「経営者保証」の推進は、むしろモラルハザードに繋がる可能性もある。 金融界での脱「経営者保証」の流れは、事業会社同士の商取引にも波及する。信頼感のある金融慣行と商慣習の確立に向けて、企業と金融機関は情報共有をはじめ、相互努力が必要だ。