【菊花賞回顧】長距離戦で光った名手たちの手腕 アーバンシックの勝利で再び脚光浴びる「ランズエッジ」と「ハービンジャー」
三冠完走は5頭
2024年10月20日に京都競馬場で開催された菊花賞はC.ルメール騎手騎乗のアーバンシックが制した。出入りが激しく、落ち着かない流れを的確な仕掛けで仕留める。これぞ長距離戦といえる鞍上のヘッドワークが光った。 【2024菊花賞】注目の予想はここからチェック! 菊花賞の3000mはスピード面の進化が著しい昨今、必要とされていないのか。個人的には中距離のスピードを問う皐月賞、日本競馬の象徴・東京での緩急と瞬発力を必要とするダービーとくれば、三冠最終戦は持久力と底力を問う菊花賞がしっくりくる。 三冠はすべて問われる適性が異なるからこそ、三冠制覇の価値は高い。だからこそ、たとえ時代遅れであっても、菊花賞は3000mでいい。 今年の三冠完走はミスタージーティー、ビザンチンドリーム、コスモキュランダ、アーバンシック、エコロヴァルツの5頭。三冠を通し、着順を上昇しつづけた馬はいない。 やはり三冠はサラブレッドの成長期にあるとはいえ、攻略は難しい。ここに皐月賞除外ダノンデサイル、ダービー取消メイショウタバルを加え、7頭が三冠挑戦を完走した。 そのメイショウタバルが菊花賞のカギを握っていた。薄々、逃げないのではという予感はあった。誰もが単騎逃げ確実と決めつけたときこそ、疑う。週明け火曜の時点でXにそんなことを投稿したが、それが現実となった。 やはり競馬では前提を疑うことは大切だと思い知る。そして、メイショウタバルの大逃げというシナリオが崩れたからこそ、菊花賞は騎乗する側にとって非常に難解な戦いになったにちがいない。
日本競馬を照らすハービンジャー
最初に飛び出したのは、ダービーで逃げたエコロヴァルツ。メイショウタバルが控えるならこの馬が先手を奪うのは納得も、正面スタンド前で13.0を刻むと、ノーブルスカイが先頭を奪う。 大逃げ一頭のタテ長という隊列ではなく、大きな集団で進むとなると、窮屈になる。マイペースを決めるなら、行くしかない。 外目で折り合いが厳しくなったメイショウタバルがそっとハナに立つと、それをピースワンデュックが交わす。この時点で好位は先頭に立っては下がるという動きを繰り返しており、ごった返した。 ダービーでは好位インのポケットが最高のポジションだったが、今回はここがもっとも厳しい位置に。ダノンデサイルはリズムをつくれなかった。後方に下がりながらも、最後は伸びて6着。ダービー馬の意地はみせた。悲観しなくていい。 これら前の攻防を見ながら、外目の動きやすいポジションを確保したのがアーバンシック。いつでもどこからでも動ける位置をとらせたら、ルメール騎手の右に出る者はいない。 3コーナー手前からじっくりと動き、呼応した武豊騎手アドマイヤテラを先に行かせ、これを目標に下りで仕掛けたルメール騎手。想定外の流れのなか、名手たちのアドリブ力が淀の下りで炸裂した。これぞ長距離戦だ。結果的にここでついていった馬たちが4着以内に入ったので、まさに勝負手だったわけだ。 現3歳世代はディープインパクトの妹ランズエッジの当たり年だった。すでにレガレイラ、ステレンボッシュ、アーバンシックの3頭でGⅠを3勝している。 特にロカの仔レガレイラと、ひとつ年下エッジースタイルの仔アーバンシックはどちらも父がスワーヴリチャード。ロカとエッジースタイルは父ハービンジャーであり、レガレイラとアーバンシックは母名以外すべて同じ。もはや同血といっていい。 ついでにいえば、オークスと秋華賞を勝ったチェルヴィニアの父は2頭の母の父ハービンジャーだ。ここにきて血統表の奥へ入ってきたハービンジャーの底力が威力を増している印象があり、欧州の12ハロンでぶっちぎった血が日本競馬の未来に光を与える予感がある。