中国のEV上陸を牽制すべくカナダもアメリカもEUも凄まじい関税を課す! そうなると中国が次に狙うのは「政府が弱腰」な日本市場
中国車が海外で売りにくくなっている
カナダ政府が2024年8月26日に、2024年10月より中国から輸入されるBEV(バッテリー電気自動車)へ100%の関税を課す方針を明らかにした。中国政府はさっそく反発する姿勢を示しており、今後はカナダに対する報復措置をとることになりそうだ。 【画像】アメリカ市場で販売されているBYDのラインアップ アメリカ政府もすでに100%課税することを発表しており、EU(欧州連合)も関税の引き上げを発表している。中国政府が自国生産するBEVメーカーへ過大な補助金を交付していることで、中国製BEVの車両価格の著しい低下などを招き不公正というのがその理由となっている。 新型コロナウイルス感染拡大以降中国経済はかなりのダメージを受けており、内需がボロボロな状況が続いている。政府は消費を拡大させるためにさまざまな施策を凝らしているが、なかなか改善を見せない日々が続いているようだ。そうなれば政府もBEVの海外市場への積極的な出荷を推し進めてくることは、目に見えており、アメリカやカナダ、EUの動きはその予防という意味もあるように見える。 現状でとくに中国系ブランドBEVのメイン市場となっているのは東南アジアであるが、現状は中国からの完成車輸入も目立っているが、タイやインドネシアでは現地生産工場がすでに稼働しており、近々稼働予定となっている。欧州においても東欧地域ですでに現地生産工場の建設が進んでいる。北米市場向けでも一部中国メーカーがメキシコに現地生産工場の建設予定地を確保しているといった報道もある。 カナダ、アメリカ、メキシコは北米自由貿易協定を結んでおり、メキシコ製中国系ブランドBEVを規制できるのかもすでに議論となっている。つまり、東南アジアや欧州、北米では中国製ではなく同域内生産へ移行しており、それが「逃げ道」になりかねないとされている。
メーカー名で中国車の雰囲気を軽減
ただ中国政府としては国内の生産工場もしっかり稼働してもらわないと、雇用面も含め都合が悪いのは否定できない。そこで俄然注目されるのではないかと筆者が考えるのが日本市場進出である。世界3位から4位になったとはいえ、日本国内の年間新車販売台数(2023事業年度締め)は約452万台となっている。現状そのなかに占めるEV(BEV、PHEV[プラグインハイブリッド車]、FCEV[燃料電池車])の販売比率は2%台だ。 仮に中国系メーカーのBEVが全体の3%ほど売れると、約13.5万台となる。政府補助金の話は別としても、2023暦年締めでの中国の新車販売台数約3000万台のうち、NEV(新エネルギー車/BEV、PHEV、FCEV)の販売比率は31.6%となっており、台数ベースでは約950万台(日本の年間総新車販売台数の2年分以上)、性能や品質に対する中国製BEVの高い割安感は統計数値だけを見れば、その圧倒的な量産効果による企業努力の結果というものも軽んじて見ることはできないものと考えている。 政府間レベルも含め、日本と中国の間には何かと軋轢があるのは否めないので、ほかの市場のように軽々と日本市場へ進出するのは中国系メーカーもリスクが高い。 しかし、EUやアメリカ、カナダのように関税引き上げを行おうとしても、中国政府から「自由貿易を阻害する」などといわれれば日本政府がそこまで強硬に出ることができるかは疑問が残る。ここまである意味包囲網を敷かれれば、「それでは日本へ」と考えるのは自然の流れのようにも見える。 中国アレルギーが低いともされる東南アジアでも、あえてメーカー名を表に出さずに中国メーカーが進出するケースが目立っている。たとえばタイにおける上海汽車は多くの車種を「MGブランド車」としてラインアップする。また、中国メーカーは中国語名と欧文社名をもっている。たとえば奇瑞汽車は「チェリー」、長城汽車は「グレートウォール」といった具合である。日本でも有名なBYDオートもこれは欧文社名であり、「比亜迪汽車」が中国語社名であり、これに近い発音がBYDとなっている。 ブランド名で展開しなくとも、欧文社名を全面に押し出してくることで「ごまかし」は可能なのである。タイで中国メーカーだとすぐわかるのは「CHANGAN」としている長安汽車ぐらいといえるだろう。 筆者は最近、機種お任せでスマホの機種変更を行った。見慣れないブランド名なので調べてみると、中国「シャオミ」製であった。 本稿執筆段階では日本の新しいリーダーを決めるともいえる、自民党総裁選挙の話題でニュースが盛り上がっている。世代交代が進むともいわれており、政府がこのタイミングで何か新しいアクションを起こせば、中国メーカーにも好機到来となるかもしれないし、中国としてもなんらかの動きを見せるかもしれない。
小林敦志