神木隆之介&杉咲花に、広瀬すずや成田凌も…!10年前の無印ドラマ『学校のカイダン』が日曜劇場や朝ドラの主演俳優を量産できた「納得の理由」
伊藤健太郎や飯豊まりえも出演
さらに「プラチナ8」を演じたなかには、伊藤健太郎や飯豊まりえもいた。再び朝ドラつながりの話をすると、伊藤は『スカーレット』でヒロインの息子役、飯豊は『ちむどんどん』でヒロインの恋敵役を演じている。若くして白血病になる役だった伊藤は涙を誘い、婚約者をとられるかたちになる役の飯豊はむしろお似合いなのにと支持されたりもした。 なお、伊藤は『スカーレット』から約半年後、ひき逃げ容疑などで逮捕(のち不起訴)され、活動を自粛。失速を余儀なくされたが、昨年の映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』や今年のNHK大河ドラマ『光る君へ』などで勢いを取り戻しつつある。11月にはイケメン役者の多いことで知られるトライストーン・エンタテイメントに移籍して、間宮と同僚になった。 ところで「プラチナ8」役の残る3人はというと、石橋杏奈、吉倉あおい、白洲迅だ。石橋は現・大リーガーの松井裕樹と結婚してほぼ休業状態、吉倉はモデル中心の活動となっているが、白洲はコンスタントに役者業をこなしている。直近では『ギークス~警察署の変人たち~』(フジテレビ系)に出演していた。 また、メインキャストではないが、主人公らと同級生の役で小野花梨が出ていた。子役出身で地道にキャリアを重ねるうち、朝ドラ『カムカムエヴリバディ』でヒロインの幼なじみ役に起用され、プチブレイク。現在は『スノードロップの初恋』(フジテレビ系)でヒロインを演じている。
逸材の輩出作となったワケ
それにしてもなぜ『学校のカイダン』はこれほどの逸材輩出作となったのか。 これが『3年B組金八先生』の第2シリーズ以降とか『ドラゴン桜』の2作目、あるいは『花のち晴れ~花男 Next Season~』(すべてTBS系)などならなんとなくわかる。ヒット作のあとの話題作であり、言葉は悪いが、二匹目のどじょう的な感じで期待され、盛り上がりやすいからだ。また『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(日本テレビ系)のように、放送前から衝撃作であることを謳い、実際に衝撃を生んだ作品も、そりゃそうだよなという納得感がある。 しかし『学校のカイダン』については放送の前後も含めて終始、無印っぽい扱いだったし、ドラマ史においても重要視される作品ではないだろう。それがヒット作や話題作、衝撃作と肩を並べるほど、逸材を輩出しているわけだ。ひとつ、手がかりとなりそうなのが、成田凌が最終回当日に書いたブログのこの文章である。 「燃えるような熱い情熱を持ったプロデューサーさんをはじめ、素晴らしいスタッフの皆様と仕事ができて、よかったです。またどこかで成長した姿を見せることが恩返しになるはず、と思っています」 これは前出の広瀬すずの発言「ここまでモノ作りに熱くなったのは初めてで」とも符合する。現場の熱い雰囲気が、若手の役者たちのモチベーションをさらに高めたということだろう。 さらに、成田の「成長した姿を見せることが恩返しになるはず」という言葉には、このドラマのコンセプトも関係しているように思う。そのコンセプトとは劇中の台詞でもある「上がれない階段はない!」というものだ。広瀬も「特にいちばん印象に残っているセリフ」としてこれを挙げていた。成長していくことがテーマのドラマだったからこそ、キャストたちの心にもその大切さが深く刻み込まれ、その後の活躍へとつながっていったのではないか。 当時、女優よりもモデルのイメージだった飯豊まりえも、「お芝居が大好きな人が集まっているので、撮影の合間にお芝居の話をすることもあります。本当に刺激を受けています」と語っていて、この現場で大いに触発されたことがうかがえる。 というわけで『学校のカイダン』は無印のまま、その後のドラマシーンに欠かせない役者たちを世に送るという、奇跡のような作品となった。明蘭学園という、このドラマを見た人しか知らない学校から巣立っていった役者たちは今後も活躍し続けることだろう。この先の10年、いや、50年、どんなふうに階段をのぼっていくのか、楽しみにしたい。 ………… 【もっと読む】「つまらない」「退屈」との酷評も吹き荒れるが…“殺伐とせず、押しつけがましくない”橋本環奈の朝ドラ『おむすび』の真骨頂
宝泉 薫(作家・芸能評論家)