95歳の頑固な父を、67歳の娘が老々介護。免許の更新を諦めついに施設へ。「ここはいい所だ」父の言葉に救われて
作家の森久美子さんによる『婦人公論.jp』の人気連載「オーマイ・ダッド!父がだんだん壊れていく」が1冊の本となった。誇り高く頑固な認知症の父親を前期高齢者の長女が1人介護する悲喜こもごもがつづられている。認知症を疑うもどうしたらいいのか、元気の証と信じている運転をあきらめてもらうには――。悩みや戸惑い、怒りが率直に記されているけれど、心豊かな人生を全うさせたいという愛情があふれている。自らの老後にも思いをはせる老々介護の日々を振り返り今、伝えたいことは? (構成◎山田道子 撮影◎本社 奥西義和) 【写真】3歳の森さん、お父さんと弟さんと皆でおしゃれに帽子を * * * * * * * ◆一層「俺様」になってしまった ーー森さんは父を「パパ」と呼んでいる。昭和1桁生まれで、戦後流入したアメリカ文化に憧れていたようだ。広告代理店に勤めていたのでトレンディなことに飛びつく傾向がある“モダン”男性。プライドも高い。54歳の時に妻を急病で亡くして以来、男やもめでたくましく元気に暮らしてきた。スポーツクラブに車で通い「スーパーマン」を自認する父。米寿を過ぎたころから、なんだかおかしいと感じるようになった。 本のタイトルの「壊れていく」は、私の感じからすると「変化」ではなくて「変容」です。食べ物の好みが変化したとは言いますが、変容したとは言いません。トータルに様子全体が変わったのです。 まず何より、プライドがさらに高くなりました。父はとても有名な会社でバリバリ仕事をし、現在に残る業績をあげてきたことを誇りにしています。言葉を変えると、一層「俺様」になってしまった。例えば、「あいつらは小さな会社にいたからな」とか差別的な物言いが激しくなってきたのです。 私は聞き捨てならなくて「パパ、そういう考えは失礼だよ」と諭したりしました。でも、人に対する思いやりのなさが増えてきた。元々、父は他人に対するやさしさを持っていただけに、人が変わってしまったように感じてきたのです。
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