自己肯定感がしぼむ子ども、頼りの教諭も多忙極め余裕を失う…家庭でも、学校でもない〝第3の居場所〟は誰がつくる?
不登校の子どもたちが増え続け、学校教育は岐路に立つ。学びや居場所を、どう確保するのか。鹿児島県内の不登校支援者や保護者は、衆院選での論戦に耳を澄ます。 不登校は「悪」じゃない 子どもの〝SOS〟に気付くには? キーワードは「自己肯定感」「居場所」
平日のお昼時。鹿児島市吉野2丁目のNPO法人「子どもサポートグリーン」に香ばしいにおいが漂った。十数人の小中学生が、出来たてのおかずを器に盛り、友だちや職員と談笑しながら昼食をとっていた。 多くは不登校の子どもたち。約30人が学校代わりの居場所として利用し、毎日通う子もいれば月1回の子もいる。それぞれ勉強したり、一緒に野菜作りに汗を流したりして過ごす。 園長の山之内龍さん(44)が、不登校の相談支援に乗り出したのは2021年秋。3年間で100件以上と関わってきた。「学校で自分らしさを失い、自己肯定感がしぼんでしまった子どもたちが集える場が必要だった」と明かす。まずは子ども自身が、自分を大切な存在だと思える居場所づくりを大切にしている。 □■ 全国の小中学校で22年度、30日以上欠席し「不登校」と報告された児童生徒は10年連続で増え、過去最多の29万9000人に上った。 鹿児島県内でも、22年度は公立の小中高校で4507人に上り、10年で倍近く増えた。県教育委員会によると、新型コロナウイルス禍を機に小中学生の不登校が急増し、小学生は10年で約5倍の1240人。中学生は2503人で、17人に1人の計算だ。
「SOSを出せない家庭の方が圧倒的に多い」と山之内さん。訪問型の支援や民間フリースクールへの援助、校内フリースクールや学びの多様化学校(不登校特例校)など、受け皿を整備する必要性を挙げる。「どんな子にも教育が保障される仕組みを整えてほしい。そうした観点から1票を託したい」と、各候補が掲げる政策を注視する。 □■ 声を上げ始めた保護者もいる。かごしまこどもの学び場友の会は、フリースクールや家庭への経済的支援を促す意見書を国に出すよう、県内各地の議会に働き掛けた。県と鹿児島市など16市町議会で意見書提出につながったという。 中心メンバーの柴田麻由美さん(41)=姶良市=は「不登校問題を掘り下げると、学校の在り方や子育ての負担の大きさなど、さまざまな課題が見えてくる。社会全体で考えていかなければ」と警鐘を鳴らす。中学2年の長女が学校を休みがちだという女性(40)=曽於市=は「今の学校は先生に余裕がなく、すべての子が通える環境ではない。国は、未来をつくる子どもたちにしっかり投資してほしい」と訴えた。
南日本新聞 | 鹿児島