ニッチなオプション戦略に資金流入、人気の高さが裏目に出る恐れ
(ブルームバーグ): かつてはヘッジファンドやボラティリティー追求の投資家だけが好んで用いたニッチな株取引手法が、ウォール街で主流のオプション戦略へと急成長を遂げた。あまりの人気に押しつぶされるのではないかとの懸念が浮上している。
「ディスパージョン取引」として知られるこの戦略は、伝統的に銀行のトレーディングデスクや、キャップストーン・インベストメント・アドバイザーズやワン・リバー・アセット・マネジメントといったヘッジファンドの専売特許だった。しかし市場が金利上昇に見舞われパフォーマンスが改善したため、新型コロナウイルス流行後に新たな資金が流れ込んでいる。
ディスパージョン取引では、ロングとショートのポジションを組み合わせ、S&P500種株価指数のような指数と、指数を構成する個別銘柄のボラティリティーの差から利益を得ることを狙う。ある推計によれば、この戦略に関連する資産は3年間で3倍に拡大した。そのため、この戦略の核心である裁定取引が損なわれる恐れがあり、将来のリターンが減るのではとの懸念が出ている。
ソシエテ・ジェネラルの株式デリバティブ戦略責任者、バンサン・カソ氏は「自らの成功が裏目に出るようなものだ」と指摘。「この戦略で今後利益を上げることはかなり難しくなるだろう」と述べた。
ディスパージョン戦略では、ナスダック100のような指数のオプションを売り持ちとする一方で、エヌビディアやテスラのような同指数を構成する個別銘柄のデリバティブを買い持ちにする。
この取引に最適な条件は、個別銘柄が大きく動き、買い持ちにしたオプションの価値が上がる一方で、大半の銘柄が互いに相殺されて指数が安定的に推移し、売り持ちのオプション価値が下がる状況だ。指標金利が上昇した過去3年は、まさにこうした望ましい環境にあった。ソシエテ・ジェネラルがまとめたデータによると、S&P500種構成銘柄の平均ボラティリティーは同指数の平均ボラティリティーを上回り、その幅は少なくとも2011年以来の大きさとなっている