「競技選手が引退後はまさかの映画制作に」五輪スケーター・村主章枝 畑違いの転身先とラスベガスに暮らす今
■「買い出し」から「資金集め」までなんでもする ── 直感に従って、映画の世界へ!そして、2019年に映画制作会社を設立。展開が早いです。村主さんはどんな仕事をしているのですか? 村主さん:私を含め共同経営者3人で、映画制作のプロダクションを経営しています。大手映画会社だと専門家の労働組合があり、仕事内容が細かく決められているため、職域を超えることはないのですが、私たちの場合は小さな会社なので、幅広い業務を担当しています。資金調達、撮影計画作り、役者さんのお世話や送迎、買い出しや現場で照明のセッティングもして、道具も運びます。
── そんなに!かなりいろいろな能力が必要とされますね。これまでどのような作品を作ったのですか? 村主さん:テーマは子どもの人身売買の問題や、周囲からは評価されていても自分自身を過小評価しネガティブにとらえてしまうペテン師症候(Imposter syndrome)の方を描いた社会課題からホラーまでさまざまで、短編・長編といろいろ扱っています。歴史ファンタジーの短編では、いくつか賞を受賞しました。
■「映画制作とスケート」違いと似ているところ ── 2019年からはじめて、わずか数年で作品が評価を受けるなど、映画プロデューサーとして順調に経験を積んでいるように思えますが、スケーター時代とは異なる環境です。大変だと感じることはありませんか? 村主さん:スケートは個人競技なので、コーチなど関わる人数は限られていました。一方、映画制作は多くの人が関わり、いろんな国からアメリカに来た人たちとチームで作ります。そのため、文化や考え方が異なるメンバーで、短期間に作品を作り上げる大変さはありますね。
ほかにも、作品作りに影響のある要件として、屋外の撮影だと必ず天候に左右されます。役者さんの体調など、不可抗力への対応もありますね。制限のある状況下で期限内に作品を作るのは大変ですが、同時におもしろくもあり、すべて意味のある経験としてポジティブに受けとめてやっています。 ── 逆に、スケートと通じる部分は? 村主さん:みんなでひとつの作品を作るという点は、スケートと通じるところがあります。やはり、何かを作り上げていくプロセスが、私は好きなんだと思います。