長澤まさみ主演で映画にもなった「祖父母殺害事件」…孫たちがじいじ・ばあばに殺意を抱く「憎しみの理由」
祖父母に「宝物」とまで言わせる存在の孫。だが、その孫が祖父母を殺害する事件は珍しくはない。2024年10月31日、静岡県浜松市で祖父母ら親族3人を殺害した山田悠太郎被告(25歳)の裁判員裁判も始まった。山田被告に限らず、孫はなぜ祖父母に殺意を抱くのだろうか。 【マンガ】工事現場でよく見かける「交通誘導員」はいくら稼げる?驚きの最高月収
殺人の半数が親族間で起きている
「山田悠太郎被告は2022年3月、自宅で同居していた祖父の浦山毅さん(当時79歳)と祖母の秀子さん(当時76歳)、兄の健人さん(当時26歳)の3人をそれぞれハンマーで殴るなどして、殺害した殺人の罪に問われていました」(全国紙司法担当記者) 山田被告は「殺した記憶はない」などと起訴内容を否認している。 「祖父母は健人さんに山田被告に暴力をふるうよう依頼しており、山田被告は家庭内で虐待を受けていたことが冒頭陳述で明らかになりました。怒りや恨みから犯行にいたったものと指摘されています」(前出の全国紙司法担当記者、以下「」も) こうした孫による祖父母殺害はなにも珍しいことではない。 「犯罪白書」(令和4年版)によると、日本で令和3年に起きた殺人事件は808件。内訳をみると親族間が最も多く、372件だった。これは殺人全体のおよそ46%を占めている。つまり殺人事件のほとんどは顔見知り、それも血縁関係のある親族間で起こっているのだ。 祖父母は「その他の親族」に区分されており、より具体的な数字は出ていないが、この年には25件発生していた。 「親子間の殺人がもっとも多いのですが、孫が祖父母や同居する親族を殺害するケースも珍しくはありません。親殺しに比べると発生件数はそう多くはありませんが、毎年起きています」
被害者と加害者の面識率は90%
2024年7月28日には、静岡県菊川市で27歳の男が祖父母と、同居していた親族を刺殺したうえ、逃走する事件を起こした。'22年には長崎県の37歳の男が91歳の祖母を殺害。動機は「介護ストレスで精神障害になったこと」と述べていた。 これまでも祖父母が狙われる事件は各地で起きている。 「2020年に公開された長澤まさみの主演映画『MOTHER』は、孫が祖父母を殺害した事件をベースにしたものです。当時17歳だった埼玉県川口市の少年が祖父母を刺殺、キャッシュカードなどを盗んで逃走した事件でした。少年は強盗殺人容疑で逮捕され、懲役15年の判決が出ており、現在も収監中です」 じつはこの祖父母の殺害は母親の命令だった。動機はカネ。少年は母親や継父から日常的に虐待を受けて育つなど、反抗できない複雑な生い立ちだったことも裁判で明かされた。 川口市の事件は特異的なものだが、孫たちが祖父母に殺意を向ける理由は何だろうか。祖父母同時に殺害することもあれば、どちらか片方という場合もある。 犯罪心理学に詳しい東京未来大学の出口保行氏は次のように説明する。 「殺人の動機の60%は「憤まん」や不満など負の感情です。前提として殺人事件の場合、見ず知らずの関係性の中で起きるのではなく、加害者と被害者の面識率は90%近く。その半数は家族を含めた親族です。つまり殺人は家族など濃い人間関係の中で蓄積した負の感情を一気に解消することで起きる。祖父母殺しの場合、孫が負の感情を抱いていたことは当然推測できます」