教養・家柄・容姿…『光る君へ』からわかる平安時代の恋愛マッチング
◇まひろが道長に送った陶淵明の漢詩 第10回で、まひろと道長による手紙のやり取りがあります。 「思ふには 忍しのぶることぞ 負けにける 色には出いでじと 思ひしものを」 (恋心を抑えようとするのは、もう無理だ。 顔に出さないと心に決めていたのに) 道長からの手紙を受け取ったとき、まひろが「古今和歌集……なんで……」と言い、直秀の亡骸を二人で埋葬しているシーンに切り替わります。そして、まひろは「あの人の心は、まだそこに……」と呟きます。 以前の回を振り返ると、第6回で描かれた「漢詩の会」のあと、道長から贈られた恋の歌(ラブレター)に対して、まんざらでもないという反応でした。 しかし、第7回における打毬のシーンで、貴族の男たちの本音を聞いたまひろは、道長の手紙を燃やして拒否する意思を示します。まひろから返信が来ない道長も「振られた」と述べ、二人の関係は終わったかに見えました。 そして第10回に戻ると、親友である直秀の死というツラい出来事に直面した道長が、現実から目を背けるように、再びまひろへの想いを募らせラブレターを送ってきたのです。突然のことに戸惑うまひろでしたが、悲しみに暮れる道長を救いたい一心で、漢詩を送ります。 感情的な和歌とは異なり、漢詩には冷静に道長の進むべき道を諭す内容が込められていました。 まひろが道長に送った漢詩は、世界史ではお馴染みである陶淵明(とう えんめい)の詩です。貧しい暮らしだったにも関わらず、陶淵明は儒学の勉強に励み、国の官職に就きます。しかし戦争や政争に巻き込まれ、人間に嫌気が差した陶淵明は、晩年にわたり隠居生活を送るようになりました。 まひろが陶淵明の詩を送ったのは「戦争なんかが起きない平和な世の中をあなたに作ってほしい」というメッセージでした。 「実に途(みち)に迷ふこと其(そ)れ未(いま)だ遠からず 今の是(ぜ)にして昨(さく)の非(ひ)なるを覚(さと)る」 (つい最近まで、道に迷っていた。だけど今、正しい道がわかったのは、過去の過ちがあったからだ) まひろからの漢詩を受け取った道長は、知人からのアドバイスもあり、同じように漢詩で返事をしました。まひろは、道長が冷静さを取り戻し、自分の進むべき道を定めたと判断したため、彼に会うことを決意しました。 このように和歌と漢詩を使い分けられることからも、まひろの教養の高さがわかります。そして、道長への感情もそこに表れていたように思えるのです。
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