二宮和也「本来だったら受けなかった」 『インフォーマ』新シリーズ出演への決め手となった“桐谷健太の言葉”
桐谷健太が2023年に単独初主演を果たしたドラマ『インフォーマ』(カンテレ系)が、新シリーズとなって帰って来る。 【写真】二宮和也の撮り下ろしカット 桐谷演じる木原慶次郎は政治、経済、芸能、裏社会、警察などあらゆる情報に精通し、その情報をエサに商売をする情報屋、通称”インフォーマ”。佐野玲於扮する“ポンコツ”ゴシップ週刊誌の記者・三島寛治と共に、力によって闇に葬られる事件の真相を暴くべく情報戦を繰り広げるクライム・サスペンスだ。前作が配信された際、その迫力の物語に話題沸騰。満を持しての再始動となった。 しかも木原&三島コンビはもちろんのこと、前作を盛り上げたキャスト、スタッフが再集結。さらに二宮和也、池内博之ら豪華俳優陣が新シリーズを彩るというから、ワクワクが止まらない。 次なる舞台はタイ・バンコク。闇バイトによる強盗事件をきっかけに、謎の“ブツ”を追いかけることに。物語のキーパーソンのひとりが、警視正・高野龍之介を演じる二宮だ。物語が進むにつれて木原と高野の過去も明らかになっていく、というのも大きな見どころだ。 そこで今回、二宮が数メディアの合同取材に出席。本作に出演することになったきっかけから、桐谷との関係性、そして現場で再会した先輩たちとの会話内容などをたっぷりと語ってもらった。 ・桐谷健太が熱烈オファー 「出てくれ」という言葉に応えたかった ――今回の出演は、桐谷さんからの熱烈オファーを受けられての出演だったとお聞きしました。 二宮和也(以下、二宮):いやー、もうこれは桐谷健太じゃなきゃ出てないですよ、たぶん。もともと僕自身『インフォーマ』を観ていましたし、続編があったら嬉しいなと思っていたファンでしたけど、この作品が面白い面白くない、評判の良し悪しとか関係なく、桐谷健太が「出てくれ」って言ってるから出る、みたいな感じでしたね。 そうじゃなきゃ、本来だったら受けなかった……と言ったら語弊がありますけど、実際スケジュール的にもかなり厳しかったんで。ちょうど『ブラックペアン』(TBS系)をやっている最中だったんですよね。『ブラックペアン』の人たちに「1週間タイに行ってもいいか?」と聞いたら、「ダメ」と言われました(笑)。それでも健太くんは「高野っていう役はニノしかありえへんねん」とずっと言ってくれていたんでなんとかならないか、と。 最初は、役者同士の口約束みたいな感じなのかなと思ったら「いや、ホンマに出てほしいねん」って。そこまで言ってくれるならと、僕から監督の藤井(道人)さんに連絡をして、どうしたら出られるのかってところを詰めていった感じです。「(昨年の)年末には結論を出してください」って言われてたんですけど、それでも現場との調整が難しくて。撮影が始まってからも待ってもらっている状態が続いていました。「ここの時間をあっちにあげるから、ここの時間はこっちにもらいます」みたいなやりとりをずっとしていましたね。 ――出演するまでに壮絶な攻防があったのですね。 二宮:はい。僕自身、そういうやり取りをするのが初めてだったので、関係各所に助けてもらいながら、やっとたどり着いたという感じでした。だから、本当に安心しましたよ。「高野でいきます」ってなったときは。収まるところに収まってよかったです。正式に「この形でいきましょう」と決まったのは、みんながタイに行ってからだったので、僕は結局タイに行けなかったんですけど。 もともと僕は面白い現場の声がかかったら、どんな役であろうと極力そこに顔を出せるように努力したいといつも思ってるんですけど。今回の場合は、そこに「どうしてもニノに!」って言ってくれる桐谷健太の存在があったので余計そう思いましたね。やっぱり嬉しいじゃないですか。人間として人から頼られるっていうのは。 「スケジュールがあるんで、それは出られません」といった事務的な対応じゃなくて、「もういいじゃん。これだけ言ってくれてるんだから」という人間的な対応がしたかったというか。最終的には「あの人がそこまで言うなら」と、人と人との繋がりで進んだ話でした。 ・桐谷健太の第一印象は“本音でぶつかれる人” ――桐谷さんに心を動かされて実現した『インフォーマ』出演ですが、二宮さんから見た桐谷さんの魅力とは? 二宮:健太くんは、とにかく裏表がないんですよ。なんていうのかな。動物とかがあんまり吠えなさそうっていうか(笑)。あと長瀬(智也)くんと仲が良いんですよね。長瀬くんは天然でマイワールドがしっかりある人なので、分かち合える人って芸能界のなかではかなり限られていて。そこを唯一と言ってもいいくらい親睦を深める存在になれているのは、やっぱり健太くんの人間性があればこそなのかなと。 僕が最初に健太くんに会ったのは『流星の絆』(TBS系)という作品だったので、もう15年以上前か……。最初の印象は、本音でぶつかれる人なんだなって感じでしたね。彼は現場でもちゃんと悩んだり、苦しんだりするんですよ。もちろん、基本的にはポジティブで、まっすぐに「自分はこうしたいんや!」って言う人なんですけど、同時に「ホンマにこうしてええんやろか」と苦悩していて。 普通の大人だったらそういうところってあんまり見せたくない部分だったりすると思うんですよ。その場では胸のうちに秘めて帰ってから悶々として、次の日の現場に持ってきたり……。なのに、健太くんは「ちょっといま考えてます」というのを、現場でも隠すことなく見せてくれる。ウソをつかない人なんだろうなと思うので、犬にも吠えられなさそうだなって(笑)。 そうして、ちゃんと悩んだ結果、出来上がりを見ると、やっぱり一流。その作品にちゃんとミートしているなというのがわかる。僕はそういうところが昔からすごく好きですね。で、気がついたらトントントン……と、共演する機会が増えていって。直接オファーしてくれるような関係性になりました。 ――桐谷さんには、たしかにどんな方とも仲良くなれるイメージがありますね。 二宮:そうなんですよ。それを一番強烈に感じたのが『ラーゲリより愛を込めて』という映画を撮影したときで。現場には、たくさんの捕虜役の人たちがいたんですが、健太くんはあっという間に仲良くなっていて「あれ、健太くんは? どこに行った?」って見渡すと、なんかみんなで雪かきとかしてるんですよ。もう、その人間力みたいなところに圧倒されちゃって。演じているのは、その人たちからめちゃくちゃ嫌われている役なのに。なんておもろい人だなって思いました。 そういう人と人との繋がりを大事にしていくところから作り上げるのが、桐谷健太の作品との向き合い方なんだろうなって。『インフォーマ』の現場でも、誰よりも熱い思いを持っていたのがわかりましたし、それこそ俺のことを「来てくれて良かった良かった」と言ってくれてましたけど、ほかにもあの人の頭の中にあるピースがハマっていく瞬間っていうのがあったんだろうなと。その一つひとつがすごく嬉しかったんだろうなっていうのも伝わってきました。『インフォーマ』は、あの人のそういう思いが純度の高いまま作品になっているんじゃないかと思いますね。 ――タイと東京と現場は離れてしまいましたが、撮影中には桐谷さんとなにかお話をされましたか? 二宮:健太くんがタイで撮影しているときは、本当に2~3日おきぐらいに連絡が来ましたね。「今日、刑務所行って来たで」みたいなメッセージと一緒に、すんごい強面な人たちと仲良さそうに記念写真を撮った画像とかも送られてきたりして(笑)。 でも、実際に撮れたデータを見ると、カーチェイスしたり、川に飛び込んだり、日本ではなかなか撮れないような派手で爽快感のあるシーンも満載で驚かされましたね。なんていうか、「続編で、もうここまでいってんのか」みたいな。もっと人気シリーズになってお金がかけられるようになってからじゃないの、って(笑)。でも、もともと『インフォーマ』ファンとしては、こうして撮影の状況と、1つの作品になって届けられるのと、2重に楽しめるなと思いました。 ――ABEMAのドラマに出演されてみて、地上波ドラマや映画との違いは感じられましたか? 二宮:僕はABEMAのドラマにも初めて出演したので、ABEMAのドラマがどんな現場なのかあまりわかってなかったんですけど、「来てくださってありがとうございます」みたいな声がいっぱいあって、ずっとお姫様状態でしたね(笑)。だからというわけではないんですけど、現場の印象は俳優たちがちゃんと権利を持っているなというか、俳優たちの「こうしたいんだ」ということに対して真摯に向き合ってもらえる空気を感じました。 地上波ドラマはどうしても時間に追われる部分が多くて、「俳優がこう言ってるから一旦揉んでみよう」というのが物理的に難しいというのがあるんですよ。「ここはもうコレでいきましょう」みたいになってしまうことも致し方ない場面がある。それでも合格点ではあるんです。けれど、現場でポンッと出た議題に対して、ちゃんと受け止めて、みんなで考えようよっていう時間を作れるというのは、やっぱり粘度が高くなっていくよなって感じる部分がありましたね。 それが主演だからとか、ベテラン俳優だからとかではなくて、誰に対しても時間を割いてくれて。その俳優さんの気持ちがスッといいところに収まるまで、ちゃんと向き合ってくれるっていうのは本当に贅沢なことだなって……。でも、わかんない。これは、もしかしたら健太くんの現場だったからかもしれないっていうのもあるんですよね。 ――桐谷さんが主演だからこその空気というのがあったんですね。 二宮:そうですね。やっぱり健太くんはどこに行っても変わらないし、言ったらずっと表の状態の人なので、やっぱり気持ちがいいですよね。ちゃんと考えて創り上げていく。本当にポジティブで、ストレートで。物語とは真逆なんですけどね(笑)。 もう、なんていうか、日本刀を持った般若さんが走り回ってるみたいな、こんなクレイジーな現場はなかなかないんですよ。それを「走ってるな~」って眺めているときに、僕のなかではもう舞台版『インフォーマ』を観ているみたいな気持ちになりました。この作品じゃなければ出会えなかった方もたくさんいましたし、夢のような時間を過ごさせてもらったなと思います。 ・高橋和也、森田剛との再会、そして続編への期待も ――前作に引き続き、高橋和也さん、森田剛さんなど先輩たちのお名前も並びました。 二宮:シーンとしては和也さんが一緒にいる時間が長かったですね。やっぱり感慨深いものがありました。もちろん前の事務所の話も普通にしていましたし、昔話から「いまはこんなことをしています」というような話をしたりして。それこそ、和也さんが『インフォーマ』の撮影が終わった次の日から全国ツアーが入っていたらしくて。「絶対に終わらせなきゃ」と言っていましたね(笑)。 森田剛くんにはちょっと会えたんですけど、謎の褒め言葉をもらいました。先ほどもお話したように、僕は『ブラックペアン』も同時期に撮影していたので、今回の高野役ではウィッグを被っていたんですよ。なので、森田くんに「これウィッグなんですよ」と話したら、「え、そうなの?」って驚かれて。 「やっぱわかんないですよね?」って言ったら、「いや、わかんなかった。変な髪型してるなと思ったけど」って(笑)。「それじゃ、ダメじゃん!」って。「変な髪型じゃないんだよ、コレ!」って言いましたけど。でも、ウィッグとは気づかなかったという点では、ホメられているのかな。 前の事務所のときから和也さんも剛くんも、わりと話す人ではあったので懐かしかったですし、なんか後輩然としていられる現場でもあったので、過ごしやすかったですね。世間話をしつつ、ちょっと芝居をして、みたいなありがたい時間を過ごさせてもらいました。なにより僕自身、視聴者視点で「続編も出てくれるんだ!」みたいな感じがして嬉しかったです。 『インフォーマ』は今後もシリーズが続いていくことができる作品だと思うので、そこも作品ファンとして楽しみにしています。
佐藤結衣