アルプス山脈で結婚式、両親は飛行機事故に…波乱万丈な登山家・今井通子が『テレフォン人生相談』を32年続けるワケは?
「山では、男性だから女性だからもなく、自分のことは自分でやるのが基本。なので、夫は自分で料理もするし、洗濯は私よりも好きなくらいなんです(笑)」 次々と新たな道を開拓する彼女が、両親を航空機事故で失ったのは37歳のとき。南極遊覧旅行に“いってらっしゃい”と送り出してすぐのことだった。 「事故直後はとにかく忙しくて『お姉さん大胆よね。だって、お葬式の日も居眠りしてたじゃない』と言われるぐらいでした。でも、半年たつとすごい寂しくなって」 突然の親の死にひどく落ち込んだ今井さんは、山に登る気にもなれず、「自分は、親を心配させるためにいろいろ危ないことをしてきたのかな」と思った時期さえあったのだとか。 それでもやはり、山への挑戦は続いた。エベレストにチョ・オユーと、世界を駆けまわるうちに、医師業にもこんな影響が。 「私の患者さんって、手術後早く退院できることが多いので、絶対自分の腕がいいんだと思っていました。ただね、ある患者さんに『先生の回診はいいなあ。真っ黒い顔してて、日なたの匂いがするから、それだけで元気になるよ』と言われて(笑)。なんだ、私が元気の源だったのか、と」 現在82歳、エネルギッシュさはそのままだ。’07年には南極観察団として南極に滞在し、’23年には名誉東京都民の称号も受けた。 超多忙な今井さんらしく、高橋さんがアウトドア事業の拠点を長野県穂高町(現・安曇野市)に移してからというもの、30年前から夫婦別宅での生活を続けている。 「私は仕事もあるし、東京を離れないって言ってありますのでね。結婚当初から、2人きりで過ごす時間はほとんどない。お互い好き勝手やっていますから、昔もいまも、生活はさほど変わらないのよ」 それでも結婚してよかったと思うのは、責任が半分になるところ。 「自分でいろんなことはやるけれど、その自分がやりたいことをやる時間やお金というのは、相手がいるからつくれるわけです。自分一人で稼いで、山に行くのは大変ですが、生活費が半分ずつだったから、よかったのかも」 結婚25周年を祝う銀婚式は、奥穂高岳山頂で行われた。 (取材・文:服部広子) 【後編・テレフォン人生相談】「お若いなあと。ビックリですよ」ディレクターが最も印象に残った「80代女性」の恋愛相談とは?へ続く
「女性自身」2024年12月24日・12月31日合併号